9日に肺炎で亡くなった東映の岡田茂名誉会長(享年87)の通夜が10日、東京・青山葬儀所で営まれた。

 俳優菅原文太(77)が、岡田氏にお別れの言葉を述べた。「仁義なき戦い」「トラック野郎」など、東映の大ヒットシリーズに主演。「もうケンカもできなくなりましたね。よく怒鳴られ、怒鳴り返したことがありました」と切り出した。関係者によると、2人は脚本について細かくこだわるタイプ。脚本をめぐって、激しく議論することも多かったという。菅原は寂しい思いを口にした。

 一方、岡田氏と仕事上で激しくやり合って良い物を生み出してきたからこそ、分かることもある。「岡田さんという大きな木が倒れる音が昨日の朝、農園の裏山から聞こえてきた。でも心配しないでください。岡田さんの後のヒノキが大きく育っています。今の偽善的な世の中にパンチを食らわす、東映作品が必ず生まれる」。岡田氏を安心させるかのように、力強く東映の繁栄を予言した。

 菅原は通夜が始まる約50分前に会場入りした。葬儀委員長の岡田社長に促され、ひつぎに左手をかけてのぞき込んだ。笑顔の遺影とひつぎの中で眠る岡田氏を何度も交互に見た。わずかな時間だったが、2人きりで最後の別れを静かに交わしていた。【近藤由美子】