民主党の公式キャラクター「民主くん」が、11月1日に発表される「ゆるキャラグランプリ」に“出馬”している。10月4日段階で216位。日々少しずつ、じわじわと順位を上げているが、200位の壁が当面の焦点だ。8月の出馬表明会見では「1位を目指す」と息巻いていたが、蓮舫氏のかつての言葉で名高い「2位じゃだめなんですか」の2位にも、さらにまだまだ遠い。

 先日、民主党の会合を取材した際、「ワンクリックした?」という会話が、何度か聞こえた。ネットやスマホでも投票できるため、協力を呼び掛けていたのだろう。野党第1党という「組織」を持っていても、なかなか上位に食い込めない。党の置かれた現状を気づかせる悲哀を抱えつつ、それでも民主くんは毎日、公式ツイッターでダイエットなどのプライベートな話題をつぶやいたり、ラグビーW杯やヤクルト優勝などのスポーツ時事ネタにも反応。支持拡大へ、涙ぐましい努力を続けている。

 「民主くん」は有志により生み出され、07年6月に初めて、街頭でお披露目された。結党以来の党のマークをかたどった、赤丸が連なるボディー。ピンクの分厚い唇は、魚肉ソーセージを想像させ、「魚肉唇」と言うんだとか。(そう聞いて実際に見ると、ちょっと生々しい)。

 今回のゆるキャラグランプリ出馬までは、「非公認」扱いだった。ツイッターで、出馬に向けて1000人分の賛同を得たことで、公認がおりたという。それにしても、非公認の期間が長かったことに、驚いた。これまで選挙活動では、「人寄せ」的な役割を担っているのを見てきたからだ。

 選挙の取材で何度も見てきた民主くんは、愛らしいしぐさで道行く人に握手を求めていた。将来の有権者になる子どもたちのウケは良く、女子高生の写メの対象になっていることも多い。ただ、興味の対象が民主くんで止まってしまい、演説を聞かないまま立ち去る人も多かった。そんな意味では、党と有権者を結ぶ「かけ橋」には、まだなれていないのかもしれない。

 出馬に際して発表されたマニフェスト(政権公約)には、「ゆるキャラパワーで、政治に関心を持つ若い人を増やします!」と、若者への支持拡大という新たなミッションも掲げられていた。

 民主党は今、野党再編に向けた流れの渦中にある。解党や、新党結成を求める声もある。そうなれば、民主くんはどうなるのか。民主党のマークが変わってしまえば、民主くんの「使命」も終わってしまう。8年越しで得た、悲願の「公認」なのに…。

 党の動きに、完全に自らの行く末を握られている、民主くん。グランプリの結果とともに、その「運命」にも注目しなくては。