東京都の小池百合子知事(64)が12日、都庁で宮城県の村井嘉浩知事(56)らの訪問を受け、都政改革本部が先月29日に20年東京五輪の新たなボート、カヌー会場候補として挙げた、同県登米市の長沼ボート場の説明を受けた。

 宮城県は「宮城県での2020年東京大会ボート、カヌー競技開催に係るレガシープラン」と題した18ページの資料を作成、それをスライドに映し、村井知事自らが説明した。主な内容は以下の通り。

 ▽アクセス 乗り換え時間を除き、最短で成田空港から約2時間、東京駅から約2時間10分で長沼ボート場まで行ける。

 ▽復興五輪の意義の明確化 登米市での開催で、20年東京五輪を「復興五輪」として身近なものにできる。

 ▽被災地にレガシー(遺産)を残す 長沼ボート場に、東京五輪を機に恒久施設を充実させ、日本のボート、カヌー競技の拠点とする。

 ▽東日本大震災の仮設住宅の活用 ユニット工法で作られたプレハブ仮設住宅は新築のようにリフォーム可能で、大会の仮設施設や選手、大会関係者の宿泊施設などに再利用。大会後は青少年、成人のボート選手の合宿施設などに活用する。

 ▽選手村候補地など 2カ所あり、登米市南方地区の仮設団地は長沼ボート場から6・6キロ(車で12分)、長沼第二工業団地は同ボート場から3・4キロ(車で7分)。近隣にはショッピングセンターや医療機関もある。

 ▽大会関係者、メディア関係者の宿泊施設 登米市内でも宿泊は可能だが、隣の南三陸町にある「ホテル観洋」は客室244室、収容人数1300人で、そこを拠点にする。

 ▽道路の整備 長沼ボート場の周辺は自動車専用道路の整備が進み、東北道、三陸道のいずれからも経由が可能。

 ▽財政面の対応 長沼ボート場の最低限の恒久的施設の整備は宮城県が負担(東日本大震災復興基金などの活用を検討)し、仮設施設の整備は組織委員会で負担。

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 小池知事は会談後「村井知事自ら来られて(説明は)非常に分かりやすかった。『復興五輪』という言葉が、どこかにいってしまっているというのも、長沼が注目されることで、あらためて見直されているのではないかと思う。選択肢の1つ。思いは十分に受け取った」と前向きに答えた。

 仮設住宅の活用についても「私自身、阪神大震災の仮設住宅をコソボ、台湾に送った経験があり、当時、私は『ミスプレハブ』と呼ばれた。仮設住宅の再利用は分かりやすいメッセージを含む」と前向きだった。

 一方、村井知事は「小池知事から『非常に分かりやすいプレゼン。ぜひ検討したい。まず現地に行って、よく考えてみたい』とお答えがあった」と大きな手応えを感じ取った様子だった。15日には小池知事が、長沼ボート場を視察する予定で、当日は同所で高校生の新人戦が行われる。また南方地区の仮設団地の視察も予定されているという。

 村井知事は「実際、競技をしておりますので、ご覧いただけるかと思いますし、船に乗って水面を移動してスタート地点まで行っていただくことも考えております。知事には『パンツ姿で運動靴、スニーカーを持ってきて下さい』とお願いしました」と言い、笑みを浮かべた。当日の小池知事の、アウトドア仕様のファッションにも注目だ。