144年の歴史を誇る老舗劇場の新たな挑戦だ。東京・明治座で昨年9月から外国人観光客などを対象にしたナイトプログラム「SAKURA-JAPAN IN THE BOX」に取り組み、16日から再びロングラン公演が始まる。歌、ダンスに日本の伝統芸能を凝縮したショーで、アニメのキャラクターが登場。プロジェクションマッピングを多用し、スマホ撮影もOKという。現在は日本人客の方が多いが、20年東京五輪まで続け、外国人観光客への浸透を狙っている。

 「SAKURA」は、創業100年を超える老舗劇場である明治座が昨年9月から始めたエンターテインメントショー。急増する外国人観光客を主なターゲットに、通常の公演後に行う夜間のみの興行だ。和楽器演奏、殺陣、忍者パフォーマンスなど日本の伝統芸能を凝縮しながら、進行役のアニメキャラクター「SAKURA」をはじめ、春夏秋冬四季の精のアニメキャラクターも登場。女性アイドルたちの歌、ダンスに今はやりのプロジェクションマッピングの映像を多用し、スマホを持つ観客も公演に参加できる観客参加型のミュージカルでもある。

 出演陣も声優、舞台、ミュージカル、バンドなど幅広い分野で活動する若手女優が集まった。AKB48を卒業した岩田華怜、仁藤萌乃も主要キャストに名を連ねている。

 開演は日によって午後7時か同8時半に設定している。明治座は「外国人観光客の方がよく言うのは、ニューヨークやロンドンなど世界の大都市に比べて、東京では夜に楽しめるものが少ない、ということ。舞台を見たくても、マチネー(昼公演)が多く、夜も午後6時半か、遅くとも7時に閉演する。それならば、通常の公演が終わる、7時以降に開演する公演を企画しました」。

 公演は昨年9月に始まった。12月は明治座の内部改装のため休演しており、今月16日から再開する。これまでの観客の比率は外国人観光客が3割、日本人客が7割という。「アニメファンなどの日本人客の方が多いけれど、今後は外国人観光客の比率を増やしていきたい」という。日本語のチラシのほか、英語、中国語のチラシを作製して、国内外の旅行会社などに売り込んでいる。

 最近はカーテンコールなどに限定してスマホでの撮影可とする舞台もあるが、「SAKURA」で画期的なのはスマホ撮影が最初から最後までOKということ。さらに専用アプリをダウンロードすることで、公演中に音に合わせてスマホが光ったり、音が鳴ったりするという。「まさに観客参加型の公演ですが、撮影可能にすることで、見た方にSNSで画像とともに『良かったよ』と拡散してほしいんです」。

 「SAKURA」は全席指定の6000円で、上演時間は休憩なしの70分。今回の公演は3月31日までの予定だが、今後も同様の公演を続けることを検討している。「外国人観光客は中国、台湾の方が多いけれど、ブラジル、イタリア、フランスなどから来た方もいる。20年の東京五輪まで、もっと多くの外国人観光客に楽しんでほしい」としている。【林尚之】

 ◆明治座(めいじざ) 1873年(明6)創業。東京で最も長い歴史を持つ劇場。歌舞伎を中心に歴史を重ねながら、戦後は演歌歌手の座長公演など大衆路線を明確にして、幅広い演目が上演されている。関東大震災、東京大空襲など出火により5度焼失しながら、復旧を繰り返してきた。1993年(平5)に建てられた現在の劇場は、18階建てビルで、屋上にヘリポート、地下に警察、消防との連絡用無線を整備するなど防災対策を行っている。所在地は東京都中央区日本橋浜町。