2020年東京五輪のゴルフ競技が行われる霞ケ関CC(埼玉県川越市)が会場変更の危機に立たされている。定款の細則で正会員を男性に限定しており「女性差別」との批判が相次いでいる。国際オリンピック委員会(IOC)は大会組織委員会に改善を求めているが、大会関係者によると、ゴルフ場の姿勢が変わらない場合は「会場変更も辞さない」とも伝えており予断を許さない。28日、取材に応じた霞ケ関CCも細則変更は「容易ではない」との見解を示し、状況は厳しい。

 霞ケ関CCの今泉博総支配人(68)は「細則変更は簡単ではない。総会ではいろいろな意見が出ると思うし、変わるとしても(時期は)見当がつかない」と率直に話した。

 細則を変えるには18人で構成する理事会の議題に上げ、議決された場合に約1250人の正会員が出席できる総会で議論する。異論がなければ理事会の決議が決定事項となるが「反対意見も出るでしょう。覆る可能性はある」と説明した。

 女性の正会員を検討との一部報道に対し「理事会は月1回開かれるが、2月の理事会でも(女性の正会員を認める)議題が上がるか決まっていない」と否定した。

 一方で「女性差別」との批判には困惑している。週日会員(祝日を除く月~土曜にプレー可=入会金800万円)となり、1年が経過すると正会員(別途400万円支払い)になる権利を得られるが、その細則に「正会員になれるのは男性」と書かれている。女性は原則として日曜日はプレーできないが、年間六十数日ある日曜祝日の約半分はプレーを認めている。週日会員に96人、家族会員に115人がおり、会員で構成される11の委員会には全て女性が入っているという。1929年(昭4)創設の3年後には家族会員制が敷かれ「伝統あるクラブでは開放的な歴史がある」と語った。

 そもそも立候補ファイルで会場となった際も、IOCにはクラブの定款も全て提出済みだったが、小池百合子都知事が13日に「女性を認めるべきだ」と苦言を呈してからIOCの態度が急変。クラブ側は戸惑いを隠せない。

 差別を禁じる「五輪憲章」などに抵触するとし、IOCが会場変更もちらつかせるが、霞ケ関CCの88年の歴史を重んじる正会員が多くいる事実も否定できない。クラブ全体の総意によっては、双方の溝が埋まらない事態も想定され、当初からの霞ケ関CCでの開催案は混迷を深める可能性を残している。【三須一紀】

<ゴルフ会場問題の経過>

 ▼17年1月4日 組織委の森喜朗会長が記者団に霞ケ関CCが選手村から遠く、輸送面で問題があることを説明した。その上で職員に、全力で問題解決することを指示。一方で解決しない場合に限り、会場変更を検討することを示唆した。

 ▼10日 組織委の武藤敏郎事務総長が会場変更を否定。

 ▼11日 日本ゴルフ改革会議(JGC)が都庁で若洲ゴルフリンクス(江東区)への会場変更を求める記者会見を実施。

 ▼13日 小池知事が定例会見で霞ケ関CCに苦言。

 ▼27日 JGCが森会長に若洲への会場変更を求める要望書を提出。IOCが組織委に懸念表明したことを認める。