将棋に充てる時間の制約が増えたことに不安を感じ、「中卒でプロ一本」の道も考えた。神戸市の自宅から近い私立の中高一貫校の滝川中で学んでいた谷川だったが、最後は滝川高に進学することを決めた。

 「高校に行くことで規則正しい生活もでき、視野も広げることができた。限られた時間の中で勉強と将棋を両立するため、メリハリをつけることができました」。授業は他の生徒よりも集中して聴いた。高校進学後、谷川は将棋では毎年、昇段昇級した。19歳で八段になり、21歳の史上最年少で名人位を獲得した。

 これまで中学生でプロになった谷川を含めた4人(加藤一二三・九段、羽生善治3冠、渡辺明竜王)は、いずれも高校に進学している。先駆者の谷川は「どちらが正しいとかではなく、決めたことが正しかったと思えるようにすることが大事です」。

 タイトル獲得の最年少記録は屋敷伸之九段の18歳6カ月(1990年度の棋聖)。最年少記録まで藤井には、3年6カ月の時間がある。記録更新の期待もあるが、谷川は「タイトル戦の挑戦者になるのは、現状の実力ではまだまだです。ただこれからトップ棋士と対局する機会が増え、勝ったり負けたりする中で自分にないものを吸収していくはず。最年少タイトル獲得の可能性は十分にあるでしょう」。学業の両立か、それとも…。15歳が「最善手」を決める。【松浦隆司】

 ◆谷川浩司(たにがわ・こうじ)1962年(昭37)4月6日、神戸市生まれ。73年に奨励会入会。76年に14歳8カ月で四段に昇格しプロ棋士に。中学生棋士誕生は加藤一二三・九段以来、22年ぶり2人目。デビュー戦は77年2月、加藤九段と対局し黒星。83年に史上最年少の21歳で名人になった。12年12月に日本将棋連盟会長に就任、今年1月に辞任。