昨年1月、千葉県野田市の小学4年生・栗原心愛(みあ)さん(当時10)が虐待死した事件で、傷害致死、暴行など6つの罪に問われた父親の栗原勇一郎被告(42)の裁判員裁判の初公判が21日、千葉地裁(前田巌裁判長)で行われた。

勇一郎被告は起訴状が朗読されると、認否に先だって「一言言ってよろしいでしょうか。娘にしてしまったこと、しつけの範囲を超えたことを後悔しています。未来の心愛ちゃんを見ることをできなくなって、謝ることしかできません。本当にごめんなさい」と頭を下げたが、起訴事実は一部を除き、全面もしくは一部否認した。

<1>虐待が露見するきっかけとなった17年11月6日の心愛さんの小学校での「お父さんにぼう力を受けています」というアンケートについては、書かれたようなことは行っていないと無罪を主張した<2>18年7月30日、心愛さんに大便を持たせ、写真に撮った強要事件については「(心愛さんが)ふてくされて『撮るなら撮れよ』と言ったから撮影した」と否認した<3>胸部骨折を負わせた18年12月30日~10年1月3日の傷害事件は「宿題をせず注意すると暴れた。取り押さえるための行動だった」とし、顔面を殴打し、胸部を圧迫し、骨折を負わせたことは知らないと否認した。

<4>妻(33)への暴行については「精神的に不安定な妻が心愛さんを暴行しようとしたため、止めようとしたもの」と主張した<5>19年1月5日、年末年始の旅行に行けなかったのは心愛さんのせいだとして「責任取れよ」と心愛さんを引っ張り、浴室に長時間立たせた強要事件は「間違いありません」と認めたが、<6>飢餓とストレスによるショック、致死性不整脈、溺水で心愛さんが死亡した19年1月22、23日の傷害致死事件については「食事を与えないよう妻に指示したことはない。暴れる心愛を落ち着かせようと冷水シャワーをかけたが、顔面に直接かけていない」と否認した。

濃紺のスーツに青のネクタイ。頭を短く刈った勇一郎被告はタオル地のハンカチを握りしめ、たびたび目や鼻をぬぐった。入廷時、退廷時には裁判員、検察官だけでなく傍聴席に向かっても深く頭を下げたが、「娘のためにできることは推測、先入観でなく、事実により真実を明らかにすることだと思います」と全面的に争う考えをみせた。

裁判は今後、勇一郎被告の母親、傷害ほう助で懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年の判決が確定している妻、小学校の担任、児童相談所の担当職員らの証人尋問の後、3月4~6日に被告人を質問を行い、3月9日、結審する。判決は3月19日に言い渡される予定。