記録的な大雪の影響で福井県の北陸道や石川県とつながる国道8号で車が立ち往生し、11日までに一時1200台超が動けなくなった事態を受けて、福井・坂井市のパン製造「オーカワパン」から市側に災害援助申請があり、約2万食のパンが救援物資として寄付されていたことが11日、分かった。

市によると、同社の大川恭史社長から「困っているドライバーさんにパンを進呈したい」と直接電話があったといい、10日午後から10種以上のパンが、救出作業を展開する陸上自衛隊を通してドライバーらに配布された。

オーカワパンもこの豪雪で、県内だけではなく石川、滋賀県へのスーパーを中心に100カ所以上へのパンの配送ができず、約2万5000食のパンが宙に浮いた状態となっていた。同社工場から近い北陸道丸岡ICで自衛隊員に2000食を渡し、追加で自衛隊員の詰め所となった坂井市役所丸岡支所に残りの1万8000食を届けた。

福井県危機対策・防災課では「寄付されたパンは国道8号で動けなくなったドライバーを中心に、自衛隊に配布してもらった」と話した。11日もストックされていたパンを配布した。同課では「すぐに食べられるし、福井県民であればオーカワパンを知らない人はいない。保存できる即戦力の非常食でもある。本当に助かった」と、胸をなでおろしていた。

オーカワパンは1949年9月創業の老舗。「心を満たすパンづくり」を理念に、坂井市の学校給食なども受け持つ“地元のパン屋さん”として認知度は高い。今回配布されたのは、配送されて店頭に並ぶはずだった、ビニールに包装されたパンの数々だ。

1つは、コーヒー風味のソフトな食パンにコーヒークリームを挟んだ「コーヒーサンド」(同社広報担当によると「1番人気です」)。

また、フランス産ビターチョコレートをデニッシュ生地で包んで香ばしく焼き上げた「チョコクラシック」、和菓子風味のクッキー生地をのせて焼き上げ、同社広報によると「甘過ぎず毎日食べても飽きない」という「マリート」も。このほか、期間限定商品の「こんがりもちぷにチーズ」「雪メロン」「自家炊きクリームパン」や、定番の「くるみあんぱん」「手編みれーずんパン」「こしあんぱん2個入」などが、配られたそうだ。

同社は18年2月の記録的豪雪時もパンを寄付している。SNSでは今回、オーカワパンのパンが配られたことが話題になっており「他人も身内もない。最高です」「オーカワパン、カッケー」「ほっこりしました」などのコメントが寄せられている。【寺沢卓】