ニューヨークのホテルは高い。だから、こんな商売も成り立ってしまう。ついに、先々週末の暴風雪による記録的な大雪を逆手に取り、Igloo(かまくら)を作ってAirbnb(エアビーアンドビー)に広告を載せ、宿泊客を募集する人が現れた。Airbnbはご存知の通り、世界中の現地ホストとユーザーがサイトを通じ、家を宿泊施設として貸し借りするためのサービスである。

 今回、一躍注目を集めているのはブルックリンのグリーンポイント在住の男性。自宅の裏にかまくらを作り、「Boutique Winter Igloo for 2(2人で泊まる冬のブティックかまくら)」というタイトルで広告を載せた。宿泊料金は1泊200ドル(約24000円)で、広告のキャッチコピーは、「2016年、最も熱望されるバケーション先。自然素材だけを使用し、ハンドメードで造りました。シックなドームスタイルのバンガローを体験してください」。さすがプロの広告アートディレクター、PRの仕方がうまいw  ちなみにこのかまくら、3時間ほどかけて作ったらしいが、広告はAirbnb のサイトからすぐに消されてしまった。

 それにしても、1泊200ドルというマンハッタンの中堅ホテル並みの料金には、笑ってしまった。シーズンオフの今なら、1泊150ドルぐらいで泊まれるブティックホテルがたくさんあるはず。ニューヨークで人気上昇中のエリア“ブルックリン”といえば聞こえはいいけれど、その中でも交通が超不便な上に、まるっきりイケてない微妙な地区グリーンポイントで1泊200ドル。しかも、気温が氷点下のさなかで屋外に寝泊りするなんて、とても正気とは思えない。かまくらの中はけっこう暖かいとは聞くし、北欧には氷のホテルもある。いや、それでもだ…。これがヒップなウィリアムズバーグとか、マンハッタンの高級住宅街というなら、かろうじて200ドルの価値はあるかもしれないが、それでも宿泊ではなく、かまくらの中で過ごして楽しむだけにしておいたほうがいいだろう。

 男性本人が自分のウェブサイトで説明しているところによると、大雪になる数カ月前から計画していたものの、冗談半分だったらしい。ところが、信じられないことに、世界100国以上の人たちから広告にレスポンスがあり、5人がすでに申し込みをしていたそうな。“ニューヨーク”というだけで、世界中の人にここまでアピールしてしまうところが、スゴイ。

 Airbnb側としては、かまくらの賃貸を禁じてるわけではなく、実際にオーストリアで59ドル(約7000円)でレンタルされているらしい。しかし、今回のニューヨークのかまくらは同サービスの規定に反するようで、広告を出した男性は、「あなたのかまくらは非常によくできているようだが、私たちの宿泊施設の基準に合っておらず、検索結果から外させて頂いた。水道と電気の使用が可能で、屋根が溶けない施設を選んでください」との警告メールを受け取ったらしい。Airbnb側の判断は妥当といえるでしょう。ニューヨークならではの、ちょっとビックリなお話でした。(米ニューヨーク在住・鹿目直子)