ぶっちぎりのV2だ! 「日刊スポーツ・フィッシング・サーキット」ブラックバス部門の決勝が22日、千葉・亀山湖で行われた。集中豪雨に見舞われながらも、決勝進出した15人全員が釣果を残すレベルの高い争いを展開した。優勝は2年ぶり2度目の永井恵一さん(45=東京・日の出町)で、入念な試し釣りが栄冠への道となった。

 勝つべくして勝利した。「正直、何で釣れたのか、本当のところはよく分からない」。2年ぶりの優勝にちょっと戸惑う表情の永井さんは口をとがらせた。

 3匹でほぼ3キロ。最大魚は1キロを超えていた。それでも、釣れた理由は必ずある。しつこく尋ねると「ボイルがあったんですよね、ボイルが」。魚が水中で呼吸をするときに出る気泡を湖面で確認したという。

 永井さんは、22日の決勝に向け、会場の亀山湖に6回プラクティス(試し釣り、略称・プラ)に来ていた。同じく相模湖代表の斎藤正史さん(44)と一緒だった。永井さんはもともと河口湖「ハワイ」、斎藤さんは新利根川「松屋」の常連で、バス決勝で知り合ってから意気投合し、なぜかともに相模湖「柴田」に通うようになって、バス談議で心を許す仲になった。

 亀山湖は得意ではない。そこで、カバー撃ちのうまい斎藤さんを口説いてプラに付き合ってもらった。

 永井さん もう、プラの度に斎藤さんにやられっぱなし。それでも、プラ最後の2回で、大きなのを連続してバラした。それがボイルの絡んだ状況だった。もしかしたら、と思って自作のミノーを投じたら5バイトで3匹とれた。

 その3匹のうちの2匹が1キロ超と約800グラム。プラで得た情報が本番で結実した。

 永井さんがルアーをつくったのは「思い通りの動きのするルアーが欲しい…そうか、つくればいいのか」と何度も試行錯誤を重ねて、完成させたのが水面に浮くタイプのミノー「ビット」だった。

 永井さん イメージは、もがいて横になったままバタバタする弱ったワカサギ。横になるようにフックを横腹につけて、4分割してPEの糸で結んで、音を出さずにクネクネ泳ぐようにした。バスがいれば食いついてくる。

 通い慣れた河口湖で、2年前からワカサギが大量に回遊するようになり、バスがワカサギを捕食するようになり、本物に近いルアーが求められていた。ウロコまで再現した型をつくって、プラスチックを流し込んでフックを固定する。

 あるルアーメーカーにも興味を持たれたが「こんなに精巧なのはできない」と白旗を上げさせるほどの仕上げ具合だった。その思いを込めた自作ルアーは、河口湖だけではなく亀山湖のバスも振り向かせた。

 プラに付き合いカバー撃ちの極意をアドバイスした斎藤さんは「オレは負けたけど、でも永井さんを勝たせることができた。悔しいけど、うれしいですね」と神妙な顔つきで語った。

 最後に永井さんは「これで優勝2回。V2は、過去には斎藤さん含めて3人。史上初の3回制覇を奪い取る」と、シード出場権を獲得した来年の決勝大会に堂々の連覇宣言をして締めくくった。【寺沢卓】

 ▼試合経過 秋雨前線の影響で決勝開始前から雨の降る展開だった。朝5時30分過ぎに本部となった「ボートハウス松下」桟橋をスタート。途中、携帯電話のメールによる釣果報告を午前9時、同11時30分にしていたが、携帯電話が雨にぬれて機能しなくなったり、亀山湖全域での集中豪雨もあり、選手の安全を確保するため、午後1時30分の帰着時間を1時間切り上げた。試合は序盤に3匹合計で2500グラム前後を確保していた永井さんを、ゆっくりとフォールするダウンショットリグで攻めた谷中さんと、地元の利で縦方向のストラクチャー(水中の障害物)を重点的に狙った馬場さんが追う展開だった。

 ▼賞 V2を決めた永井さんには、クリスタルトロフィーと賞状、がまかつ提供の高級バスロッド「ラグゼ ATS05 S64L」(4万9000円相当)、マルキユー提供のドライバッグ「PA-02α」(7000円相当)など豪華副賞も贈られ、参加した15人全員に永浜いりあから賞品が渡された。また、いりあとのじゃんけんで勝ち抜いた山口さんが、関東近郊の温泉ペア宿泊券を獲得した。

 ▼宿 亀山湖「ボートハウス松下」【電話】0439・39・2926。営業時間、ボート料金などは要確認。

 <主催>日刊スポーツ新聞社、日刊スポーツ新聞社指定共栄会 <協賛>がまかつ、マルキユー、上諏訪温泉「ぬのはん」ほか。