横山さん あの緑の周辺にはアユはいない。それと泳ぐアユがいるけれど、群れになっていて縄張りを意識している感じでもない。夏のもっとも難しいパターンかもなぁ。

 ドッキリすることをつぶやく。聞こえなかったのか代吉くんは瞳をキラキラさせていた。つり橋の上から川をのぞいて「うぉ~、あれ、アユだね。いっぱいいる。よし、釣るぞぉ~」とはしゃいでいた。

 川に入る。つり橋より下流。横山さんのアドバイスで流心を外して、やや緩やかな瀬にオトリを泳がせる。岩の後ろから影がスーッ、と寄ってきて-離れた。以後、その繰り返しだった。群れるアユは縄張りを持たない。アユにやる気がない。ピンチだ。

 「夏のもっとも難しいパターン」。このことなのか。元気に泳ぎ回るアユ。しかしオトリを追わない。何度かあたってくるが、掛からない。代吉くんも場所を少しずつ変えながらサオを立てたり、倒したりする。アユは振り向いてくれない。雨が降ってきた。強く川面を打つ。それでも釣れないアユの泳ぐ姿はしっかり見えていた。

 横山さんがつり橋下で、キャッチ。天然アユだ。「ポイントとして見逃されがちなんだけど、アユの反応のシブいときは橋の下がいい」と教えてくれた。その横山さんの釣りあげた天然アユを受け取り、オトリを交換し、つり橋の下流に代吉くんが入った。

 オトリを投入して30秒。あっさり釣れた。やはり天然アユだ。どうやら天然アユには反応する。

 代吉くん やったぁ~、天然には天然なのか。アユ釣り、奥が深いなぁ。うれしいー、たのしー。

 釣りを続ければおそらく追釣できたかもしれないが、川が増水してきたため、安全を考慮して終了。なんとか天然アユに巡り合えた。

 横山さん 雨が入って、川も変わるかもな。群れになっていたアユも縄張りを持つかもしれない。興津川はこれからだよ。

 来月17日の大会前に天然と遊べる興津川をのぞいてみようか。【寺沢卓】