【ピオリア(米アリゾナ州)17日(日本時間18日)=四竈衛】イチロー先生が新入り雄星の不安を取り除いた。マリナーズのイチロー外野手(45)は菊池雄星投手(27)からボールが滑ると相談を受け、公式戦では大丈夫と太鼓判を押した。「ライブBP」と呼ばれる実戦形式の打撃練習では、昨年5月2日以来291日ぶりにメジャーの投手を相手に打席に立ち、19日(同20日)に菊池と対戦する可能性も膨らんできた。

   ◇   ◇   ◇

イチローは昨季ジャイアンツで14セーブを挙げた快速右腕ストリックランドを相手に、7球中1回スイングし、結果はファウルだった。「別にどうということはないですよ。元々、僕はこれ(ライブBP)が嫌いです。別にマイナスとは言わないですけど、特別にプラスというわけではない」と淡々と振り返った。打者にすれば「目慣らし」にすぎず、基本は投手の調整の一環という位置づけだ。

「嫌い」とはいえ、相手がかわいい後輩であれば話は別だった。練習後のクラブハウス内。いつものようにグラブの手入れをするイチローが、間近にいた菊池に声を掛けたことで2人の会話が始まった。

イチ 雄星、いつ(ライブ)BP投げるの?

雄星 明後日(19日=同20日)です。

イチロー どうなのかな。打席に立つのかな。見たいなあ、ブルペンも見たい。だって日本で一番いい左投手だからね。

雄星 イチローさん、ボールなんですけど、親指をかける所がどうも…。

イチ それ、よくわかる。シアトルに行ったら大丈夫。(乾燥地帯の)アリゾナが異常だから。

ほほ笑みながら優しく話すイチローに対し、菊池は恐縮しながらも、滑るメジャー球に苦心している実情を相談。これまで質問したいことが「山ほどある」と話していた菊池に、あこがれの先輩は「大丈夫」と激励の言葉をかけた。

図らずも、前日の菊池は「自分の持っているものを憧れの選手に見ていただけるなら、もちろんうれしいですよね」と素直な思いを口にした。そんな菊池に対し、イチローも直接「見たい」と応答。雄星少年が初めて見たプロ野球は、00年6月6日のオリックス-ダイエー戦(岩手)で、もちろんお目当てはイチローだった。「対決」が実現すれば、2人にとって貴重な空間となるに違いない。