<広島2-8阪神>◇15日◇マツダスタジアム

 天に向かって高々と掲げられたフォロースルーが感触を物語っていた。5回に1点を勝ち越し、なお2死一、二塁。阪神新井良太内野手(30)が野村のシュートをとらえた。低めの難しい球をすくい上げた打球は右中間スタンドへ飛び込んだ。2号3ラン。目の前で5割打者マートンが歩かされた後の豪快弾だった。

 「(マートンの四球は)当然、そうなると思いますし、そこで打てて、晋太郎に勝ちがついてよかったと思います」

 先発藤浪の勝ち星を決定づけて、首位に肉薄する貴重な1発。ダイヤモンドを1周する良太をベンチから優しく見つめるまなざしがあった。新井だった。

 開幕前、今成に三塁レギュラーを譲る形になった。だが、フタを開けてみれば快進撃になくてはならない存在だ。特筆すべきは好球必打の積極性。2ストライクまでの打率は5割9分1厘、追い込まれるまでに勝負を決める。その裏には、自分の性格をすべて知り尽くした兄からの助言もあった。新井は言う。

 「あいつは俺と違って、考えすぎてしまうところがある。『配球を読むより、打ちにいってから判断したらどうだ』とは言ったよ。見逃し方が変わったじゃろ?

 打ちにいった上で見逃している。俺は1打席しかないけえ、ストライクを見逃したら終わりだから」

 今季、代打の1打席にかけている兄からの1つのヒントだった。この日の1発も2つ目のストライクを仕留めた。根っからの明るい性格である一方、繊細さを併せ持つ。すべてのボールを打ちにいく“イケイケ”スタイルが良太の持ち味をプラスに発揮させている。

 第1、第4打席にも左前へはじき返し、早くも今季4度目の猛打賞。打率は3割9分だ。現在、リーグ最強打者と言えるマートンの後ろを任せられている。今後も勝敗のポイントで打席に立つ。首位をうかがう猛虎の連勝街道は、良太のバットが切り開いていく。【鈴木忠平】