<日本ハム8-3ロッテ>◇29日◇東京ドーム

 10勝&10発が視界に入った。日本ハム大谷翔平投手(20)が、2戦連発のアーチをかけた。1点リードの1回2死二塁で前日に続く8号2ランを逆方向の左翼席へ運んだ。50年藤本英雄(巨人)が記録していた、10勝以上した投手の同一シーズンの最多本塁打数7本を更新した。すでに投手として2ケタ勝利を挙げており、日本球界ではだれも成し遂げていない10勝&10発が見えてきた。

 大谷は振り返る。「レフトフライかなと思った」。スタンドのファンも、同じ気持ちだったはずだ。1回2死二塁。142キロの速球に、詰まった。音は鈍い。だが、左翼へ高々と舞い上がった白球は、予想を裏切り、フェンスの向こう側に消えた。「しっかりと振ることができているからだと思います」。自身初の2戦連発。今季8本目のアーチで、10勝以上をマークした投手の同一シーズン本塁打記録を更新した。球史を塗り替える、大記録だ。

 投打「二刀流」が開花しつつある。試合前練習は、投手メニューをこなしながら、フリー打撃も行う。球界で、大谷にしかないルーティン。なぜ、そんなことが可能なのか…。“究極のマイペース”が関係しているのかもしれない。

 札幌ドームで行われた今月中旬のロッテ戦では打撃練習最終組に組み込まれていたが、いっこうに姿を見せなかった。心配になった阿井ヘッドコーチがロッカーに様子を見に行くと、悠々と準備中の大谷が。「おい、もう順番だぞ」。まだ高卒2年目。並の20歳なら焦りそうなものだが、ひと味違う。「いや、まだ大丈夫っすよ~」。これには同ヘッドコーチも「天然というか何というか…」と苦笑いだ。

 先輩に対しても、スタンスは変わらない。トレーニング室で雑談になったときのことだ。話題は「世代間ギャップ」。学生時代に読んでいた漫画の話になり「どんなの読んでたんですか?」という大谷の質問に対し、周りが返答する。ほほえましい光景。だが…。知らない漫画の名前が出ると、急速に興味を失い、黙々とトレーニングに熱を入れ出す大谷。「おまえが聞いたんだろっ」。全員に突っ込まれたことは、言うまでもない。周囲に流されることなく、常に自分のペースで物事を進める。投打を両立できる、1つのポイントなのかもしれない。

 メジャーでもベーブ・ルースしか達成していない「10勝&10本」の大台は、現実的に視界に入った。7回にも内野安打で、打率も2割9分まで上昇。栗山監督は「ベーブ・ルースと比較されるならば、漫画みたいな選手が出ることはプロ野球界にとっていいこと。子どもたちに夢を与えてくれるのであれば、意味がある」と、規格外の活躍に目を細めた。

 大谷

 まだまだ満足していないです。もっともっと打てると思う。

 オレンジ色の復刻ユニホームを着る「レジェンドシリーズ」。新たな伝説は、すでに始まっている。【本間翼】

 ▼大谷が1回に2試合連続の今季8号。シーズン10勝を挙げた投手が放った本塁打数では並んでいた50年藤本英雄(巨人)を抜きプロ野球単独トップ。2試合連続本塁打は13年7月10、14日に次いで2度目。左への本塁打は今季4本目で右翼と同数を逆方向へ運んでいる。

 ◆メジャーの2桁勝利&2桁本塁打

 同一シーズンで「10勝以上」かつ「10本塁打以上」をマークした投手は、メジャーでは1918年のベーブ・ルース(レッドソックス)のみだ。13勝(7敗)、11本塁打だった。31年にはウェス・フェレル(インディアンス)が22勝(12敗)、9本塁打を記録している。