2度のワールドカップ(W杯)指揮を誇るサッカー元日本代表監督、岡田武史氏(61)が、今日14日に開幕するW杯ロシア大会を、独自の視点で「岡田武史論」を展開する。【取材・構成=木下淳】

 W杯は今日開幕する。西野ジャパンはパラグアイこそ4-2で下したが、それまでガーナ、スイスに0-2で連敗した。「直前は苦しんだ方がいい」。10年の岡田ジャパンは4連敗で本大会を迎えた。14年のザッケローニ監督は大会前に5連勝を飾ったが、逆に本番では1勝もできなかった。

 「外国人監督は、弱いチームとやって勝ち、いい気分で大会に入りたがる。日本人には向いていない。負けると不協和音が出て、まとめ直すのにエネルギーがかかるが、厳しい相手と戦い、危機感を持った方がいい」。そして指摘した。「日本人は美学に酔いがち。『武士は食わねど高楊枝(ようじ)』ではないが、ポリシー、哲学を優先し『自分たちのサッカーはこうだ』と、勝負の言い訳にする。『自分たちのサッカー』と言うことが悪いわけではない。世界がイメージする日本は『ショートパスをつなぐ国』。スタイルは形成されてきたが『そのサッカーができれば』の後に『負けても仕方ない』が続く。『崩しは良かった。あとは決定力』は『腕がいいが、命は救えない医者』と同じ。ブラジル大会を現地で見て痛感した。まだ勝負に徹し切れていない」。

 かつてヨハン・クライフは言った。「醜く勝つなら美しく負けた方がいい」。日本人は愛してやまない言葉だが「(現役時代に)クライフをマークしたし、対談もしたが、とにかく負けず嫌い。勝ったら絶対に言ってない。悔しいから言ったのだと思う」。ラグビーのエディー・ジョーンズ監督と食事した時も同じ話をしたという。すると「その通りだ。日本人は素晴らしい民族だが、なぜ勝負に徹しないんだ」と言われた。冷静な岡田氏も「同感よ。やっぱり勝負は勝たないかんのよ」と関西弁に戻るほど言葉に熱が帯びていた。

 4年前は、ザッケローニ監督に「調子いいと怖いぞ」と伝えた。その時は「W杯だぞ。死に物狂いで戦わない選手がいるはずない」と返されたが、後に再会し「言っていたことが分かったよ」と。岡田氏は「結果より過程を重んじる日本の機微がイタリア人には難しい。美学を追うのは悪くないし、うち(FC今治)も徹底的にこだわっている。ただ、そこに逃げてはダメ。ウイニング・マインドを持たないと」。色紙には「我らが西野JAPAN 世界を驚かせろ!!」と書いた。西野監督には「腹をくくって勝負に徹する」責務がある。