【第60回】
気軽に地域の相談所を利用
保健所(1)
H君は小学3年ごろからほとんど学校に行かない不登校のまま、籍だけは中学生になった。入学式から学校に来ないH君を担任が心配し、スクールカウンセラーに相談が回った。スクールカウンセラーのTさんがH君宅を訪問したところ、毎日親に買ってもらったパソコンで同じゲームばかりをしているという。生活は昼夜逆転し食事も不規則で、両親とも会話がほとんどない様子だった。
Tさんは、思春期の問題にも取り組む花井冨士子さんに相談をした。花井さんは埼玉県埼葛南福祉保健総合センター・春日部保健所の保健師。保健師は看護師の資格も持つ医療の専門職だ。花井さんは早速、H君宅を訪ねた。しかし、H君は無表情で口をきく様子もない。身体の汚れが目立ち、顔に表情もないため、病気を発病している可能性もある。
花井さんは定期的な訪問をしながら、時間をかけ両親の心配事に耳を傾けた。ある日、母親の「本人が風邪気味で心配だ」という相談から「H君のことをお医者さんに相談してみませんか…」とアドバイスした。病院の手配をして、いざ診察日という日、それまで「Hを医者に診せたいが、言うことを聞かないので困る」と話していた母親の態度が急に変わった。
「何ともないからいい」と介入を拒否する態度を見せたのだ。両親はかたくなで、まだ医療につながっていない。「H君のように一見、単純な不登校に見えても、実は家庭の問題や心の病気などが背後に隠れている場合もあり、非常に閉鎖的で深刻な状態であることも少なくない」と花井さんはいう。
保健所に相談をした場合、その相談内容に応じて、クリニック、児童相談所、教育相談所、民生委員、福祉のワーカーなどを紹介してくれる場合もある。公務員や医師には守秘義務があるので相談内容が外に知られることはない。「本人や家族が来なくとも、学校の先生や周辺の友人や、心配をしている親せきの相談にも乗ります。気軽に相談に来てください」と花井さんは話している。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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