川口完封、天敵にリベンジ/アジア杯
<アジア杯:日本0−0イラン>◇12日目◇28日◇中国・重慶◇1次リーグD組
【重慶(中国)28日=田 誠、西尾雅治、盧載鎭】日本代表GK川口能活(28=ノアシェラン)が、イランの猛攻を封じた。再三の好セーブで0−0の引き分けに持ち込み、勝ち点7でD組1位通過に貢献した。正GK楢崎の左ひざ負傷で回ってきたチャンスを逃さなかった。ジーコジャパンは通算32戦17勝8分け7敗となった。日本は4大会連続の決勝トーナメント進出。31日にB組2位通過のヨルダンと重慶で決勝トーナメント1回戦を戦う。
川口が跳んだ。後半37分の失点危機。左ショートコーナーの対処が遅れて、正確なクロスが放り込まれた。ゴール前でボールがこぼれ、5メートル前でモバリがフリーで右足を振り抜く。それでも慌てない。体を大の字にして跳んだ。「体でシュートコースを消して腕を伸ばした」。ゴール右隅に吸い込まれそうなボールを右腕ではじいた。嫌な時間帯での失点を防いで、優勝候補の一角イランを完封した。
借りを返した。ここまでのイラン戦はエースFWダエイに2試合連続で失点を許すなど2試合計3失点と、振るわなかった。日本がイランを完封したのは92年11月3日のアジア杯以来だが、川口が0点で抑えたのは初めて。ジーコ監督からは「あれだけチャンスをつくられたが、川口のセーブに助けられた」と絶賛された。
再三、失点危機に直面しても怒らず、笑顔でイレブンに安心感を与えた。以前なら、何度もイレブンに怒ってハッパを掛ける展開だった。「もう怒りませんよ。自分のプレーに集中することが大事」。川口は変わった。サッカーでエリート人生を歩んできた。清水商で選手権優勝、アトランタ五輪ではマイアミの奇跡でブラジルを完封。日本初のW杯フランス大会出場と常にトップを走った。しかし、イングランドでの挫折とW杯日韓大会でピッチに立てなかった屈辱、デンマークで控えに甘んじる苦闘の中でたくましくなって戻ってきた。控え組の気持ちが分かるようになった。
現在は、月給40万円(推定)でデンマークのノアシェランでプレーしている。J時代の横浜でもらった年俸の10分の1にも満たない金額だ。それでも新シーズンも同チームでプレーすることを決めた。昨年はJクラブから年俸5000万円以上で誘いを受けたが、迷わず蹴った。「GKは他のポジションと違って40歳になってもできる。自分に投資すると思ったら、お金なんか関係なくなる」。
97年以降、不動の守護神として君臨してきたが、楢崎の台頭でポジションを失った。代表監督を務めたこともある川淵キャプテンは「歴史上、今のようにレベルの高いGK2人が競ったことはない」。楢崎の負傷で再びチャンスをもらって6試合2失点。どん底からはい上がり着々と結果を残している。正GKの座を奪い返す日も近い。
試合後は、イレブンを連れてメーンスタンドのわずかな日本サポーターの前に行って深々と頭を下げた。会場のほとんどが相手ファンだったため、ものを投げられる危険性もあった。それでも「アウエーみたいなところで、少ない人数で声援を送ってくれたので、どうしてもその気持ちに応えたかった」。人間的にもプレー面でも成熟してきた川口が、第2の全盛期を迎える。【盧載鎭】
[2004/7/29/09:15 紙面から]
写真=前半、好セーブするGK川口(左から2人目)(撮影・たえ見朱実)
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