リオデジャネイロ五輪日本代表、手倉森ジャパンが想定外の事態に見舞われた。合流を待つだけだったFW久保裕也(22)の派遣を、所属のスイス1部ヤングボーイズが一方的に拒否。アジア最終予選で唯一、全6試合に出場したエースは当初21日に経由地ロンドンで合流予定だった。クラブ事情で1度遅れ、ついには拒否された。

 理由は26日の欧州CL予選3回戦シャフタル・ドネツク(ウクライナ)との第1戦でFWにけが人が出たため。連絡を受けた日本協会は「承服しかねる」と返信。回答を待たず交渉役の霜田技術委員がブラジルから急きょ、スイス入り。手倉森監督は「これもアクシデント。決めつけることなく可能性を待ちたい」と話した。

 五輪は選手招集に強制力がなく、同様の事態は、同組スウェーデンなどでも起きた。国際サッカー連盟は27日に新“ルール”を通達。従来はけがの場合のみ、初戦の24時間前まで予備登録35人からのメンバー入れ替えが認められていたが一気に緩和。最優先は35人からだが、けが以外の理由でも、最終的に35人以外から、誰でも入れ替えが可能に。トレーニングパートナーで同行している東京五輪世代の磐田FW小川の大抜てきや、万が一、24歳以上のオーバーエージ(OA)枠でけが人が出た場合、予備登録35人から外れたJの点取り屋、川崎Fの大久保らもクラブの理解を得られれば、招集できることになる。

 久保の一件は、バックアップメンバーの新潟FW鈴木を加える策が現実的だが、開幕が迫る瀬戸際でのルール変更。W杯などと違い、五輪サッカー競技を取り巻く各国の温度差、難しい状況が、手倉森ジャパンの「アクシデント」により、浮き彫りとなった。

 ◆各国の五輪メンバー招集事情

 アルゼンチンは6月にA代表と五輪代表兼任のマルティノ監督が辞任したこともあり、難航。主力となるはずのディバラ(ユベントス)イカルディ(インテルミラノ)らはクラブから出場拒否され、欧州組はA・コレア(Aマドリード)ら2人だけとなった。スウェーデンはエリクソン監督が52人の招集を拒否された。当初参加予定だったヨルダン・ラーションも、父で所属のヘルシンボリを率いる元同国代表ヘンリク・ラーション監督が出場を認めなかった。