東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)が9日、都内で日刊スポーツなどのインタビューに応じた。

新型コロナウイルス禍で国民の安心安全を担保しながら開催するには「あらゆる想定が必要」だとし、大会中に大規模クラスターが発生する最悪の場合を見据え、大会を中断する基準を今後議論して定めておくべきとの考えを示した。選手らに課す大会中のコロナ検査も4日に1回の計画から頻度を増やす検討が必要との考えを明らかにした。

   ◇   ◇   ◇

橋本会長はインタビューの中で「あらゆる想定」という言葉を繰り返した。大会開催中に大規模なクラスターが発生した場合に備え「大会中断」という最悪のケースにならないよう、全ての種目でメダル授与が成立できるよう、大会期間の中で競技日程を延長するような柔軟な対応も検討する必要があるとした。一方で、どの程度のクラスターが起きたら大会を中断せざるを得ないかという基準も今後、議論すべき課題と位置づけた。

安心安全な大会実施を最優先とするため3日に行われた5者協議で、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長から「検査体制はより厳しい方が良い」と提案を受けたことを明かした。現在、選手や関係者には4~5日に1回と義務づけるPCR、抗原検査を「回数を増やす検討もしないといけない」と語った。

政府は海外観客を見送る方向で3月中旬にも決断する見込み。選手団に入っていない選手の家族が入国することも「難しい」と述べた。国内在住者限定になった場合でも観客には検査義務を課すことは規模的に「ありません」と断言した。4月中に決める観客数の上限規制については「屋内外や(収容人数の)大きさ、競技の性質などにより、競技会場によって基準は変わってくると思う」と述べた。

開催を実現させることで「日本を課題解決先進国として世界に発信したい」との思いも語った。「コロナがゼロになるまで何もしないのでは課題の解決にならない。対策を講じ大会をやり遂げることが、1つのレガシーになる」と話した。

開会式の演出ではその点を踏まえ「コロナで苦しんでいるところに、ひとつの光が見えるような映像が世界に届くものを期待している」と述べ、リモート参加の映像技術にも期待した。入場行進の参加者は選手村の滞在規制を踏まえ、当初の1万人規模から3分の1程度に自然減すると予想。さらに各国の割当枠を規制する可能性もある。

大会の中止は想定せず「あらゆる対策を講じて開催することが私の役目」と決意を述べた。無観客は想定しつつも、できれば他のスポーツ同様、観客を入れた開催を目指したい考えを示した。【三須一紀】