瓜生正義(40=福岡)が人気に応える逃げ切りで、初めて黄金のヘルメットを獲得した。25日が誕生日だった愛子夫人へ、最高のクリスマスプレゼントを贈った。グランプリシリーズ戦は今垣光太郎(47=福井)がインから押し切り、10年からつチャレンジカップ以来、9回目のSG制覇を果たした。

謙虚な人柄は、1億円を獲得した直後でも同じだった。表彰式では、25日が誕生日だった愛子夫人の事を問われて「私事ですが…」と前置きした上で、インタビュアーの質問に応えた。初のグランプリ制覇を達成したばかり。我を忘れてもおかしくないが、正義のヒーローは、いつだって変わらない。他者への気遣いが最初にあった。勝っておごらずの好漢を、多くのファンが祝福した。

とにかく、落ち着いていた。レースでは5号艇の松井繁が意表を突いた前付け。インを守ったが、90メートル付近からの起こしとなった。しかし、想定外の位置からでも、コンマ08の好スタート。同じタイミングで迫った3コースの菊地孝平を横目に、余裕を持って先マイした。しっかり仕上げた19号機を信じ切った。「1Mは基本旋回ができた。普通の感じで思ったよりも緊張しなかった」。初戴冠とは思えないほど、冷静だった。

2年ぶりに出場したグランプリ。12度目の挑戦にして初めて勝った。連続出場が途切れた昨年と比較して、自身の成長を認めた。「今年の方が調整、レースとゆっくりやっている気がします。今までは慌てて失敗していた」。その境地に達した要因を問われ、「年ですかね」と照れ笑い。不惑を迎え、九州のエースはレーサーとしての円熟期に入った。

SG通算9冠は歴代6位タイ。現役では松井、山崎智也に次ぐ。ついに黄金のヘルメットを手にし、来年からは追われる立場となる。「気持ちは常にチャレンジャーのつもりで。何も変わりません。ここからまたやっていきます」。すでに次走芦屋のペラのイメージが頭の中にあるという。常に目の前の1戦に集中。レースグレードなど、瓜生にとっては関係ない。17年も自然体。連覇に向けた挑戦が再び始まる。

【東和弘】