令和初のグランプリは石野貴之(37=大阪)がインから押し切り、7度目のGP挑戦で待望の初優勝を飾った。桐生順平は2コースから差し迫ったが、惜敗の2着。3着は白井英治が入った。また、グランプリシリーズは馬場貴也(35=滋賀)が3コースからまくり差しを決め、2度目のSG制覇を飾った。人気を集めた木下翔太は無念の2M落水に終わった。

届きそうで届かなかった黄金のヘルメット。今年こそは…の決意が実を結んだ。展示から場内の声援は石野一色。「石野、行け~」、「石野、しっかり走れよ ! 」。史上初のナイターグランプリ。地元住之江で石野の初戴冠を望むファンの声援に自身の夢を重ねた。

枠なりのインからスタートはコンマ17。決して早くはなく、1Mの先マイもターンマークを外した。2コース桐生順平がすぐさま迫る。差されたか? いや、それでも、最後にもうひと伸びがあった。「危なかった。足勝ちでした」。TR2nd組の中では平凡だった85号機を底上げし、ダブルエースの一角・78号機を駆る桐生を退けた。

大阪支部にとっても黄金のヘルメット奪還は悲願だった。09年の松井繁以来、実に10年ぶりの優勝。特に、飛ぶ鳥を落とす勢いで、SG制覇を重ねた石野にかかる期待は、とてつもなく大きかった。「ずっと言われ続けていた。勝たなければと思っていた。周囲の期待にやっと応えられた」。ゴール後はスタンドで待つファンに、両手をあげてガッツポーズ。地鳴りのような「石野コール」をあおり、勝利の余韻に浸った。

これでSG8冠。「今年1年、苦しかった」。ボロボロになりながらも、のどから手が出るほど欲しかったグランプリが、タイトルリストに加わった。「1回勝ったので2回、3回、4回と取れるように頑張りたい」。心に秘めていた目標をようやく口にできた。次の目標は前人未到のグランプリ4回優勝。「やっと、言えた」。賞金1億円は同期との旅行に使い、今夜だけは浴びるほどの美酒に酔って来年の戦いに備える。【東和弘】