“おじさん”カンパニーが頂点/天皇賞
<天皇賞>◇1日=東京◇G1◇芝2000メートル◇3歳上◇出走18頭
ベテランが激走した。不況を生き抜く世のおじさんに勇気を与える勝利だ。5番人気のカンパニー(牡8、栗東・音無)がG1馬9頭を蹴散らして豪快に差し切り、13度目の挑戦でついに頂点を極めた。8歳馬のG1制覇は史上最高齢。横山典弘騎手(41)は挑戦20度目で初めて秋の盾を手にした。2着に7番人気スクリーンヒーローが入り、連覇を狙った1番人気ウオッカは追い込み届かず3着に終わった。
見たか、これがおじさんパワーだ。13度目のG1挑戦で、8歳馬カンパニーが頂点に立った。ゴールの瞬間、横山典の右腕が高々と上がる。2度3度と腕を突き上げて、10万観衆と喜びを分かち合う。「すごい馬だ」。投げキッスにガッツポーズ。次から次へと出てくる派手なアクションが、興奮ぶりを表していた。
気迫みなぎる右ステッキにこたえ、カンパニーがはじけた。上がり3ハロン32秒9。最大の持ち味である瞬発力が勝負を決めた。「ウオッカのことは考えていなかった。自分の競馬に徹した」。道中は内でロスなくレースを進め、直線は抜け出したスクリーンヒーローの後から、馬群をさばき切った。1分57秒2のタイレコードで2着に1馬身 3/4 差の完勝。本当に強かった。
長い苦労も、いつかは報われる。横山典は「競馬は点じゃない。線なんだよ」という。1戦1戦も勝負だが、競馬は1度で終わりではない。敗戦の中にも次へつながる仕事がある。「スタッフも去年(4着)があるから、今年の仕上げがあったのだろう。今日は今まで一番の出来だった」。34戦目のG1制覇は、グレード制導入後では2番目のキャリア。長い苦労の末に悲願を果たした陣営へのねぎらいの言葉は、自らにも向けられていたに違いない。
横山典自身、実に秋の盾挑戦20度目で優勝。「秋の天皇賞はけっこう嫌な思い出があるけど今日は良かった」。過去に4度の2着。2・5倍の断然人気に支持された96年サクラローレルは馬群をさばき切れず3着に敗れ、故境勝太郎師から「へたくそ」となじられた。2度の美酒を味わった春とは違い苦い思い出があった。
カンパニーとともに戦ってきた10戦だけではない。過去の失敗、悔しさ、すべてがこの日の騎乗につながった。まさに「線」でつかんだ勝利。だからこそ「僕も最高のレースができたと思う」と胸を張った。
8歳馬のG1制覇は史上初。「何でだろうな」。進化を続けるパートナーの秘密は、横山典にも分からない。1つ、言えることがある。カンパニーはたぐいまれなる闘志を持っている。「今日だって検量室前で止まってくれない。落ちるかと思ったよ」。激闘を終えてなお地下馬道で加速し、あん上を慌てさせた。
大ベテランの優勝は、世のおじさんに勇気と希望を与えてくれた。「僕もそうだけど、おじさん世代に力をくれた」。人も、馬も、大事なのは気持ち。元気いっぱいの41歳は、ちゃめっ気たっぷりに笑った。【鈴木良一】
[2009年11月2日8時57分 紙面から]
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