筑波大の優勝で幕を閉じた今年の全日本大学サッカー選手権を準々決勝から現場で取材した。寂しかったのは観客の数だ。

 昨年王者の関学大と、関東大学リーグ1部に昇格1年目で3位と躍進した日体大の準々決勝(町田)は623人。試合はPK戦までもつれ、日体大が勝利した。同会場の第2試合「大体大-明治」は426人。準決勝は2会場で行われ、NACKの「筑波大-阪南大」が652人、町田の「日体大-大体大」は678人だった。

 日曜日開催だった決勝の「筑波大-日体大」は5850人と盛況だったが、高校野球や高校サッカー、大学ラグビーの全国大会に比べると、空席が目立つ。各会場で眠くなるような「塩試合」は皆無だったし、この大会自体、1953年から続く長い歴史もあるはずなのに…。

 決勝は筑波大が8-0と圧勝し、13大会ぶり9度目の優勝を手にした。小井土正亮監督は、記者会見の最後にこう発言している。「大学サッカーの注目度、今置かれている立ち位置を上げたい。もっと大学サッカーが注目されてもいい。高校サッカー選手権決勝で5万人の中で戦った選手がいて、それだけの価値のあるプレーをしてくれている」。

 高校サッカーは準決勝、決勝を旧国立競技場(現在は埼玉スタジアム)で行い、ほぼ満席の状態だ。高校サッカーで活躍した選手の大半が大学に進学しプレーしていることを鑑みても、小井土監督の言葉通り、動員数が万単位であってもおかしくない。

 冬の風物詩である全日本大学サッカー選手権がどうやったら観客を動員できるのか-。まず、日程だ。高校野球や高校サッカーはそれぞれ、夏休み、冬休みの期間中に開催され、大学ラグビーも土日と祝日の開催だ。だが、今大会は、2回戦と決勝以外は平日だった。せめて、準々決勝以降は、土日祝日の開催にしたらどうか。会場も、今大会は町田や大和で好カードが多かったが、都心や主要駅に近い駒沢、等々力での開催がなかったのが残念だった。ましてや、準決勝の2試合が、2カ所でバラバラに開催されるのはもったいない限りである。

 インテルミラノDF長友佑都(明大)のように、大学サッカーには日本代表へ羽ばたく逸材も眠っているし、即戦力でJクラブで活躍する選手も大勢いる。関東大学リーグも、J1、J2と開催日、開始時間が重なり、メディアもなかなか大学サッカーまで足を運べないのが現状だ。会場確保の問題など、クリアすべきハードルは高いが、リーグを含め、大学サッカーのカレンダーを再考しないと、来年もまた、寂しい観客の大学選手権になりかねないと感じている。【岩田千代巳】


 ◆岩田千代巳(いわた・ちよみ) 1972年(昭47)、名古屋市生まれ。お茶の水女子大卒業後の95年、入社。文化社会部で芸能の音楽を中心に取材。12年11月、静岡支局で初のスポーツの現場に。13、14年磐田担当。15年5月、東京スポーツ部に異動し、16年11月まで川崎F担当。現在は、主に横浜や大学、高校サッカーを取材。