日本代表MF香川真司(26=ドルトムント)が、ハリルジャパン初の1試合2発で大勝に導いた。W杯ロシア大会アジア2次予選で、日本(FIFAランク58位)はアフガニスタン(同130位)を粉砕。香川は中立地イランで前半10分と後半5分に得点し、導火線に火をつけた。国際Aマッチ通算23得点目はFW高原直泰に並ぶ歴代9位タイ。E組2位に浮上した日本は10月8日、中立地オマーンで首位シリアと対戦する。

 砂漠からの砂ぼこりが舞う場内が、その瞬間、完全に静まり返った。前半10分。トップ下の香川がMF原口からボールを受ける。得意の反転でDFを外し、間髪入れずに右足でシュート。GKの横っ跳びも届かない。3日のカンボジア戦に続く2戦連発は、W杯予選では初。6発の号砲となる先制弾で、隣国アフガニスタンから来たサポーターを黙らせた。

 「思い切って(足を)振ったんですけれど、入って良かった。こういう厳しい戦いの中で、早い時間帯に勢いを出すことができたのでね。悪いピッチで6点取れた。セットプレーでも取りたかったけど、崩しも良かったし自信がついた」

 1発で終わらないのが、今の香川の進化だ。2点リードの後半5分、左サイド寄りで再び原口からパスを受け、左足でネットを揺らした。前半35分のチーム2点目は、直前の本田のパスがゴールラインを割ったかに見える微妙な判定で、場内は殺気立った。だが香川の1、2点目は文句なし。本田が「真司は重要な仕事をした」と絶賛するほどだった。

 プロを目指していた少年時代を思い返していた。日本がテヘランで戦うのは、05年3月25日のW杯ドイツ大会アジア最終予選イラン戦以来10年ぶり。当時、香川は仙台で過ごす高校生だった。「プロになりたかった。プロになるために、どうするかを考えていました」。W杯予選は、下宿先のテレビにかじりついて見たという。C大阪からオファーが届いたのは、ちょうど05年の秋。W杯予選を見て刺激を受け、技を磨き、プロの扉を開いた年だった。

 1試合の複数得点はハリルジャパンの第1号。香川に触発されるように、岡崎が続いた。個人としても11年10月のタジキスタン戦以来、約4年ぶりの複数得点で、国際Aマッチ通算23点目は高原に並ぶ9位タイ。今月の2戦3発で歴代11位から一気に浮上した。

 「まだまだです。もっと自分自身、積み上げていきたいものがありますから」

 反省を糧にした。3日のカンボジア戦で1得点も、前半42分に無人ゴールに蹴り込むだけのシュートを外した。試合後、日本協会の霜田技術委員長に呼ばれ、精神面について個別に話し合った。汚名返上を果たした。ドルトムントで今季4得点3アシスト。その輝きを代表でも示した。E組首位のシリアとの次戦へ。香川の進化が、日本をもっと強くする。【益子浩一】