<W杯アジア3次予選:日本3-0タイ>◇14日◇2組◇バンコク、ラジャマンガラ・スタジアム

 新星が、いきなりエンジンを全開させた。19歳の香川真司だ。試合開始と同時にプレスをかける。迫力に圧倒された相手がボールを失うと、奪ったMF長谷部がシュート。開始わずか13秒での決定機は、まぎれもなく香川が演出した。

 香川

 立ち上がり、どれだけやれるかと思っていた。W杯を戦っている。国を背負っているんだと自分に言い聞かせて、何が何でも勝ちたかった。

 出場停止のエースFW大久保の代役として、プロ入り後、ほぼ初のFWに近い位置でプレーした。後半6分、ミドルシュート。同28分には玉田のパスに合わせたが、得点を奪えなかった。その10分後、足をつり、MF今野と交代。岡田監督とがっちり握手をかわし、頭をポンポンとたたかれたのは、代表の一員として認められた証しだった。「最後まで走りきらないと。前の位置でプレーしたので、もっとチャンスをつくらないといけなかった」と反省も忘れなかった。

 中学からプロになるため、故郷の神戸を離れて仙台市の強豪FCみやぎバルセロナでプレーした。ゴール前ではドリブルで仕掛けシュートを狙うことを徹底的に練習。中学1年では練習についていけないことも多かった。バテた様子を見せた時、当時の指導者から「神戸に帰るか」ときつい一言を言われても「まだやれます」と絶対に弱音ははかなかった。

 第2の故郷と思い入れのある宮城県で、この日の午前8時ごろ震度6強の地震が起こった。宮城県が育てたファンタジスタが、被災地に勇気を与える活躍を見せた。「上に行ったらもっと強い相手とやらないといけない。満足せず、もっといろいろな経験を積みたい」と気持ちを引き締めた。