<親善試合:日本2-0アゼルバイジャン>◇23日◇エコパスタジアム

 日本代表MF本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が光った。9カ月ぶりの復帰戦で全2得点を演出した。前半42分に中央でつぶれ役になって長谷部へボールをつなぐ。そこから先制点が生まれた。後半13分には香川の左クロスを頭で落とし、岡崎の追加点を引き出す。昨年8月10日の韓国戦から、空白の時間を埋めるかのように躍動した。本田は、生きていた。

 「日本はボールを回す位置が低い。もう少し高い位置でやらないといけないと思う。個々の力がまだまだ低いから。プレッシャーのある位置で回せていない。そこが日本とスペインの明らかな違い。もっと質を高めていかないといけない」

 苦悩と向き合った9カ月-。戻ってきた実感が、普段はかたくなに口を閉ざすことの多い本田を冗舌にさせた。試合後は報道陣の前で、珍しく20分以上も話し続けた。この日、10年W杯で付けた背番号18から、守備的なイメージの強い4に変えた。復帰戦の課題を指摘し、隠された背番号変更の理由も隠さず明かした。

 「18番は好きか嫌いかと言えば嫌い。好きなのは10番。だけど10は(香川)真司が付けるって決まっているからね。1番もどうかと思ったけれど、現実的に無理だから3か4かなと。で、(3番の)駒ちゃんに言ったら、こだわりがあるらしく断られた。だから4。点の取れる4番になる」

 病院の密室で流した汗がある。昨年9月に右膝を手術。復帰への道が見えかけながら、故障を再発し、バルセロナの病院を往復する時期があった。地下にある広さ15畳ほどの一室で、孤独で地道なトレーニングをこなした。軸のブレない体幹と故障箇所の強化のため、足を前に踏み出しては後ろに下がる単調な動作を繰り返した。心が折れてもおかしくない。信念があったから、前を向けた。

 味方を生かす地味な動きも、持ち味の派手さも見せた。前半24分には約35メートルの長いFKを狙った。得意のブレ球は、ゴール右上を襲い、バーを直撃。一蹴りで、衰えてはいないことを証明した。得点はなくても充実感はある。2年後に迫ったW杯ブラジル大会へ。確かな足音とともに、本田が戻ってきた。【益子浩一】