【ドーハ=9日】世界一を目標に掲げた日本代表MF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)監修のもと、W杯アジア最終予選イラク戦が“実力テスト”の場となる。W杯出場権を獲得した日本にとって、明日11日のイラク戦は調整試合。大幅なメンバー変更が予想されるが、「個」のレベルアップの重要性を説いた本田の言葉が、チーム内に浸透。新たに抜てきされる選手を含め、限られた期間で“偏差値アップ”を狙う。

 本田の声は、チーム内に行き届いていた。イラク戦で先発起用される可能性のあるFW乾貴士(25=フランクフルト)は言った。「(本田)圭佑君が(W杯出場決定翌日の)会見で言っていた。個人個人のレベルアップが今、一番重要。自分にとってもそうだと思う」。W杯で勝つために、個を高めることは必要不可欠。本田が共同会見の場であえて口にした言葉を、独り歩きさせずに受け止め、実行する。それが日本にとってW杯に向けた1歩になる。

 出場選手間の連係を強めることと選手層を厚くすることは相反するようにも思えるが、同時進行させなければチームは強化されない。チャンスを与えられる控え組にとって、イラク戦は格好のアピールの場。会見で本田が言った「自立した選手になって個を高められるか」ということは、主力だけでなく日本代表全体に与えられた最重要課題だ。

 主力と控えが入り交じるイラク戦の意味を、選手それぞれが理解している。累積警告による出場停止のMF長谷部主将は「いろんなことをやるチャンス」。その長谷部の代役とボランチを組むMF遠藤は「細貝はフィジカルが強い。高橋と組めばお互いにいい関係を築いて、(中盤を)支配できるようにしたい」と、長所を引き出しながら、高め合って戦うつもりだ。

 試合中のプレーだけでなく、チームへ向けた発言でも大きな波及効果を生んだ本田自身は、3日連続の別メニュー。右太ももの大事を取って、イラク戦はベンチスタートの可能性が高い。本田監修のもと繰り広げられる“実力テスト”を、まずはピッチ外から見届けることになりそうだ。内容次第では、その後のコンフェデ杯での戦い方が変わる。変われば変わるほど、日本の偏差値も上がっていく。【栗田成芳】