<女子アジア杯兼女子W杯アジア予選:日本2-1中国>◇22日◇準決勝◇ベトナム・ホーチミン

 なでしこジャパンが死闘を制し、初のアジア制覇に王手をかけた。1次リーグA組首位の日本(FIFAランク3位)は延長戦の末、B組2位の中国(同16位)を下し、01年大会以来5大会ぶりに決勝に進出した。後半6分、MF澤穂希(35=INAC神戸)がMF宮間あや(29=岡山湯郷)の左CKを頭で合わせ先制。同点の延長後半ロスタイムに、DF岩清水梓(27=日テレ)が頭で決勝点を挙げた。25日の決勝では、韓国(同18位)を2-1で破ったオーストラリア(同11位)と対戦する。

 壮絶な戦いをへて、なでしこジャパンがアジア初制覇へ王手をかけた。延長後半ロスタイムのラストプレー。宮間のCKを岩清水が頭で押し込むと、澤はベンチを飛び出し歓喜した。「ワンチャンスあったので、決めてくれると信じて気持ちを託しました」。MF中島がPKを献上して同点とされた後の後半39分に退いていたが、頼もしい後輩たちが粘り勝ってくれると信じていた。

 5大会ぶりの決勝進出に向けて均衡を破ったのは澤だった。0-0の後半6分。MF宮間の左CKに合わせ、迷わずニアサイドに走り込んだ。頭で流すと、ボールは角度のない位置からGKの右脇を抜けた。「この試合がどれだけ大事かはみんな分かっている。とにかく勝たなくてはいけないし、得点にこだわりたい」。その思い通りの先制点に両拳を握りしめ、ほえた。

 35歳258日での得点で、自身の日本代表最年長ゴール記録を約2年ぶりに更新した。初めて世界の頂点に立った11年W杯の決勝・米国戦の延長戦で決めた同点弾をほうふつとさせる1発に「宮間選手のパスのおかげです。感謝しています」と仲間をたたえた。

 なでしこの世代交代が叫ばれる中、1次リーグでは全25選手が出場した。だが、重圧のかかる舞台では、この日2アシストの宮間、決勝ゴールの岩清水、豊富な運動量で再三好機を作ったFW川澄ら、世界女王の経験者が存在感を見せた。特に澤の勝負強さは際立つ。1次リーグ初戦のオーストラリア戦に出場せず、エースFW大儀見の抜けた準決勝以降に照準を合わせていた。佐々木監督の起用に見事に応えた。

 今回で9度目の出場となるアジア杯は澤にとって思い出深い大会だ。93年大会1次リーグ・フィリピン戦では、4得点という華々しい代表デビューを飾った。10年の前回大会は準決勝でオーストラリアに敗れたが、中国との3位決定戦でゴールを決めてアジア枠最後のW杯出場権をつかんだ。01年大会以来、自身3度目となる決勝で目指すのは初のアジアの頂点。「あと1試合、頂点に向けていい準備をしたい」と、中2日で迎える決勝を見据えた。

 ◆11年W杯ドイツ大会決勝米国戦での澤のゴール

 1点リードされた延長後半12分、宮間の左CKに澤はニアサイドに走り込み、右足のアウトサイドでボールの軌道を変えて同点弾を決めた。日本はPK戦で勝利し、澤は大会MVPと得点王を受賞した。