プレーバック日刊スポーツ! 過去の1月26日付紙面を振り返ります。2001年の1面(東京版)は、レアル・マドリードが横浜MF中村俊輔の動向を調査と報じています。

◇ ◇ ◇

 Jリーグ横浜がMF中村俊輔(22)の海外移籍先をスペインリーグに絞ったことが25日、明らかになった。中村の意向を尊重したもので、既に本人も2002年W杯以降の移籍実現へスペイン語の勉強を開始。それに合わせるように世界屈指の強豪レアル・マドリードも中村の動向を調査していることも分かった。同日、日本サッカー協会が発表した日本代表候補にも名を連ねたレフティーが21世紀、いよいよ世界に飛び出す。

 中村の移籍先が絞られた。スペインだ。中村勝則チーム統括本部長はこの日、02年W杯以降と確認し合っている中村の移籍先について明言した。「本人はイタリアには興味を持っていない。もう、スペインに絞ろうと思っている」。

 スペイン移籍は本人の意向をくんだものだ。中盤でパスを回し、スペースを奪い合いながらゴールに向かう攻撃的なサッカーに、中村は心底あこがれている。フィジカル重視のイタリア、セリエAには興味がなく、昨年末に届いたペルージャからのオファーにも断りを入れた。

 中村自身も手が届きそうな夢への準備を始めた。本人は明らかにしていないが、中村本部長は言う。「既に独学でスペイン語の勉強を始めています。行ってから困らないようにということでしょう」。そんなけなげな中村の姿に、フロントも協力を惜しまない。同本部長は「近いうちに家庭教師をつけるつもりです。クラブが雇っている通訳ではなく、厳しく教えることのできる家庭教師と1対1で(スペイン語に)真剣に取り組めば、甘えることなく確実に進歩するでしょうから」と、全面的なバックアップを約束した。

 スペインリーグの強豪も、JリーグMVPの中村の動向に注目している。バルセロナと並ぶトップクラブのRマドリードは、昨年11月に横浜と接触。J第2ステージ最終節の福岡戦(横浜国際)をホルヘ・バルダーノGMが観戦し、隣に座った中村本部長にこう耳打ちした。「10番はすごい選手じゃないか」。柔らかいボールタッチ、視野の広さ、左足から放たれる正確なパス、FK。中村の動きにくぎ付けになった同GMは、かつてアルゼンチン代表で一緒にプレーしたアルディレス監督からも情報を収集。さらに同GMの報告を受けたフロレンティーノ・ペレス会長も中村を獲得リストに入れ、オフに入った現在も調査継続を命じている。

 中村はこの日、今年初の日本代表候補メンバーに選出された。「まだ代表に定着したとは思っていない。この人数(45人)から絞っても選ばれるようにしたい」と気を引き締めた。12月の日韓戦で痛めた右足首も順調に回復しており「(移籍については)年内に決めるとか、そういうことは考えていない。ただ、自分はタイミングとレベルアップだけを考えている。向こうに行って、何をやれるかとかね」と明るい表情で話した。今年、日本代表は欧州の強国を中心に15試合前後のAマッチを戦う。その1試合1試合が中村にとって、夢実現のためのテストにもなる。スペインで通用する技術、フィジカルの向上と、スペイン語学のマスター。日本が誇るゲームメーカーの夢は、確実に現実へと近づいていく。

※記録と表記は当時のもの