明治安田J3福島ユナイテッドFCのMF大関友翔(19)が、今月2日の第2節テゲバジャーロ宮崎戦でJリーグ初ゴールを決め、チームを今季初勝利に導いた。

相手陣のペナルティーエリア約15メートル手前でボールを受けてドリブルを開始すると、スルスルと相手をかわし、エリア外から右足でコントロールショット。見事にゴール右に沈め、慣れないゴールパフォーマンスで喜びを爆発させた。

今季、川崎フロンターレから育成型期限付き移籍で加入したU-19(19歳以下)日本代表候補。同世代で10番を背負う逸材も、昨季はクラブの分厚い選手層にはね返され、消化試合となったアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)1試合だけの出場にとどまった。その悔しさを晴らすような一撃に、福島サポーターだけでなく、川崎F関係者もわいた。

福島加入前の今年1月。大関はカタールの首都ドーハにいた。AFCアジアカップ(アジア杯)に臨む日本代表に、トレーニングパートナー(TP)として帯同していた。

約3週間にわたって日本トップ選手と寝食をともにし、10代の選手として、この上ないぜいたくな時間を過ごした。

何事にも代えがたい経験だった。非公開で行われたヨルダンとの練習試合後、名波浩コーチからボランチ陣へのフィードバックがあったという。適切なポジショニングや攻撃をつかさどる能力には自信のあった大関だがより高い要求を受けた。普段、年齢の割に落ち着いている男が興奮気味に振り返った。

「もっともっとボールを受けるためのアクションを求められたし、自分が今までやってきて(ボールを)もらえるかなと思っていた場面も、本当にもう1歩、2歩で世界が変わるという話をされた。日々発見だらけ」

MF遠藤航主将(31=リバプール)や守田英正(28=スポルティング)のプレーを間近で見て、個の力でボールを奪うことの重要性も認識した。Jリーグトップクラスとも言われる川崎Fで1年間、技術を磨いたが「さらに上を感じた」。衝撃だった。

昨シーズン終了直前、ホーム最終戦の日にアジア杯同行を告げられたという。「ビックリしましたけど、楽しみでした」。人生初のシーズンオフ。友人たちと遊ぶ予定は立てていたが、全てキャンセル。川崎・麻生グラウンドで体を動かした。

苦しんだシーズンのご褒美だった。MF三笘薫(26=ブライトン)と同じ、川崎Fの下部組織出身。大学経由でプロ入りした先輩とは違い、昨季ユースからトップ昇格を果たした。

ただ、シーズン最終戦となったACLの蔚山(韓国)戦まで公式戦の出番がなかった。サッカー人生でこれほど実戦から遠ざかったことはなかったが「いかにこういう経験をプラスに変えられるか」と腐ることなく愚直に取り組んだ。その先に、10代で世界基準を体感する幸運に恵まれた。

カタールでの経験を無駄にしない。帰国の翌日には福島入り。新チームに合流した。

「A代表の基準を、そのまま福島で示せるようにやらないといけない」

FIFAワールドカップ(W杯)やアジア杯の歴代TPを振り返ると、三笘、久保建英(22=レアル・ソシエダード)旗手怜央(26=セルティック)FW上田綺世(25=フェイエノールト)ら、数年後にA代表で主力を張ることになる逸材ばかりだ。

自身も28年ロサンゼルス五輪世代の主軸で、川崎Fでも中村憲剛氏や大島僚太らの後継者として大きな期待を寄せられている存在。ここから先が勝負になる。

刺激だけでなく、危機感も覚えた。「19歳って、あまり若くない」。スペイン代表MFガビ(19)ら同学年でも世界のトップで活躍する選手は多い。

正規のメンバーとしてアジア杯に出場できない悔しさを覚えた。「ここでいっそ気を引き締めてやらないといけない」。福島で加速度的な成長を遂げて、1日も早くA代表、川崎Fのピッチで躍動する。【佐藤成】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「サッカー現場発」)

練習でシュートを放つトレーニングパートナーの大関(2024年1月20日・現地時間)
練習でシュートを放つトレーニングパートナーの大関(2024年1月20日・現地時間)