J2湘南ベルマーレの曹貴裁監督(48)が19日、神奈川県平塚市内で講演会「共走会議」を開いた。

 曹監督はその中で、駆けつけた200人のサポーター、関係者を前に「僕がこのチームに残ったことって…よく残ってくれたとか言われますけど、正しいんですかね? 間違っているんですかね?」と問いかける一幕があった。

 26日に水戸ホーリーホックとのJ2開幕戦(Ksスタ)を控える中での意外な発言だが、その真意は、曹監督が生きてきた中で大事にしてきたキーワードの1つ「正しい/間違い」にあった。同監督は「自分の発言、行動、選択について、正しいか間違いかって、生きている時に考えている時ってどれくらいありますか?」と聴衆に問いかけた上で、例え話として自身が今季、監督として続投したことを引き合いに出した。

 それを受け、質疑応答の中で、サポーターから「(昨季)曹さんが1度、辞めることを考えていると報じられた。10連敗した時には辞めるのではないかと思った。その間の判断にどういう違いがあったか?」と質問が出た。その質問に曹監督は次のように答えた。

 「正しい/間違い」は、あくまで僕の中だけですよ。独り善がりなものではなくて周り、チームがどう考えるかを含め大事にしているだけ。10連敗は僕のサッカー人生、監督として初めて。そもそもプロのチームが10回連続で負けるのはあり得ない。責任を取って自分が辞めますと言うのは、誰もがしょうがないとか、正しいと受け止められるのは何となく分かった。ただ連敗の途中の負け方、選手の目の感じ…僕なりに何となく道が見えていたので、それをやらなきゃいけないと思ったのが、僕の正しいこと。辞めなきゃいけないなと思った時は、チームを(J1に)残すのが最優先だから、辞めなければいけないと思った。そっちがチームを救えるんだったら、それを大事にする限り正しい判断だと考えたから会社にそう言った。複雑なんですけど、勝とうが負けようが、やらなきゃいけないことはやらなきゃいけない。それが(結果として)正しいかどうか誰にも分からない。

 その上で、1週間後に開幕する今季への思いを語った。

 僕は、これからも、人が何と言おうと、自分が正しいと思うことをやります。僕の中で正しいか、間違っているか、いつも決めて生きてきました。湘南は2度、降格させた監督に、さらにオファーした甘いチームだと思われているかも知れません。ただ僕が一言、言えるのは自分の中で正しいと思う気持ちを忘れたくない。今年はスペイン合宿に行って、あらたな発見があって…来週、楽しみにしてください。

 さらに「毎日、毎月…自分たちを良くしたいとトライしますよ。僕が言えるのは、このチームに限界がない、ということだけ。6回起きて6回転ぶかも知れない…もし僕の中に明確に答えがあれば、監督をしている必要はない」と、湘南での指揮、指導に、あらためて強い意欲を口にした。

 曹監督は公演の中で、京都・洛北高3年時に全国高校サッカー選手権予選に敗れた後、2カ月強、猛勉強して早大に合格したこと、小学生時代にいじめを受けたことなど、自身の半生について赤裸々に語った。その上で「正しい/間違い」以外に2つのキーワードを挙げた。

 (1)ファジー嫌い 試合で0-0、1-1、2-1でもいいけど、勝っていてもどちらが良さが出ているか、分からない試合が嫌。何とかしろとよく言う。目標を持てない、どっちか分からないのが嫌。

 (2)一期一真剣 新しいものごとをするのに真剣になってしまうんですよ。出会いを大事にしなさいと、よく言われるんですけど…選手との付き合いもそうですけど、人としゃべる時に真剣になってしまう。1個1個問題が起きたら、直球でやってきた。これ以上、変わらない、チームが良くならないといったら行動を起こさない…でも、僕は嫌。そういうことをして生きてきた感じがします。

 サッカーだけでなく、経験談、時事問題に対する自身の見解まで触れる1時間半を終えた曹監督は、サポーターから花束を贈られた。その後、サインや写真撮影にも気さくに応じた。開幕1週間前に、自身の発案で開催した講演会で、あらためてサポーターと心を1つにした。【村上幸将】