J2札幌が、元日本代表MF稲本潤一(35=川崎F)の獲得に動いていることが23日、分かった。最終磐田戦後のセレモニーで野々村芳和社長(42)が正式オファーを出したことを公言した。稲本は川崎Fの来季構想から外れており、J1、J2含め移籍先を探している状況。来季はMF小野伸二(35)の残留が決まっており、獲得が決まれば、同学年の元日本代表コンビが札幌で結成される。

 野々村社長が札幌ドーム1万9634人のサポーターの前で突然“発表”した。「稲本選手にオファーしてます」。来季に向けた補強の動きをクラブトップ自らが公言すると、静まりかえっていたスタンドは、何が起こったのか分からず、ざわめき出した。

 今季は目標だった自動昇格どころか、プレーオフ進出をも逃した。15日の福岡戦で終戦が決まると、来季のJ1昇格に向け、即座にバルバリッチ監督とクラブで補強ポイントを精査。DF面の安定を最優先ポイントにし、本職はボランチながらDFもでき、元日本代表として知名度も高く経験豊富な稲本に白羽の矢を立て、22日夜に正式オファーを出した。

 同社長は「北海道で育った若い選手がもっと伸びていくには、世界を知っているベテランが必要。若い選手が本物を超えていくことが必要」と狙いを説明した。川崎Fでは今季、年俸約3000万円(金額は推定)でプレーしているが、既に来季の構想外になることが確定。J1と同条件を出すのは厳しいが、同社長は「うちのクラブとしてできる最大限を提示した」と話しており、2000万円前後でのオファーとみられる。

 大宮などの複数のJ1クラブが興味を示しており、争奪戦となる可能性もあるが、稲本自身は「カテゴリーは問わない。J2でもいいから必要とされるところで現役でプレーしたい」と話している。交渉にあたった三上大勝GM(43)には自分が加入した際のイメージについて具体的な説明を求めるなど積極的で、同GMは「獲得は簡単ではないが、話をした感じではポジティブな印象を持った」と話した。

 クラブが交渉する前に、公私ともに親交のある同学年のMF小野が札幌の印象について説明するなど“下交渉”も経ての正式オファー。10年のゴン中山、今季の小野と、立て続けに大物獲得を果たした交渉術で、3度目のW杯選手補強につなげる。【永野高輔】

 ◆稲本潤一(いなもと・じゅんいち)1979年(昭54)9月18日、鹿児島県生まれ。G大阪ジュニアユース、ユースと進み高3でJデビュー。95年U-17W杯、99年U-20W杯(準優勝)、00年シドニー五輪(8強)出場。01年夏アーセナルに移籍。欧州5カ国7クラブでプレー。10年に川崎F移籍。日本代表は00年デビュー。国際Aマッチ82試合5得点。181センチ、75キロ。