<欧州CL:(3)CSKAモスクワ2-1セビリア(2)>◇16日◇決勝トーナメント1回戦第2戦◇セビリア※カッコ内は2戦合計得点
【セビリア(スペイン)=山本孔一通信員】CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑(23)が、「悪魔の左足」でビッグサプライズを起こした。セビリア戦の後半10分、FKから弾丸系無回転シュートで決勝ゴールを奪った。先制アシストも記録し、敵地で2-1の勝利。2戦合計3-2で準々決勝進出を決めた。日本人選手が決勝トーナメントで得点するのも初なら、大会が欧州CLに改編されてから8強入りするのも初めて。W杯4強を目指す岡田ジャパンに、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(24)に匹敵する「飛び道具」が備わった。
圧巻の決勝ゴールだった。1-1の後半10分。ゴール正面やや右、約30メートルという長距離に、本田はゴールを見据えて仁王立ち。「サプライズを起こしたい」。迷わず左足を振り抜いた。弾丸シュートが壁を越えると、GK手前で右へ急激に沈んだ。セビリアGKパロップはパンチングで逃れようとしたが、手をはじいたボールは、生き物のようにインゴールへ飛び込んだ。
敵サポーターが沈黙する中、本田は喜びを爆発させ、CSKAサポーターが待つスタンドの前まで走った。仲間たちにもみくちゃにされ、手荒い祝福を浴びた。勝利を決定付ける、価値あるアウェーゴール。パロップは「信じられない」と首を左右に振り、ぼうぜんとピッチを見つめた。
本田
サッカーに不可能はないことを示せた。狙える場所だったので。はじかれてどうなるかと思ったけど、はじいた場所が僕が幸せになる場所でした。
08年欧州選手権でスペイン代表にも入った、名手パロップはこう振り返った。
証言1
ボールをはじこうとしたが、自分が予測していたものとは違う方向に曲がってきて、手の外側に当たった。壁もあいていたけど、本田はパワフルな良いシュートを放った。
また、バーレーン戦(3日)を前にFKの居残り練習の相手となった日本代表GK楢崎はこう見た。
証言2
今回はいつもより横の変化が小さかったけど、角度、距離も含め、あの辺りがアイツの一番得意な位置。ああいうキックを蹴る選手だと分かっていても、1球1球のボールの変化までは予測しづらい。
そして、FKなど流体力学を研究する筑波大大学院・浅井武准教授(53=蹴球部総監督)はこう解説する。
証言3
ほとんど無回転状態で飛び、大気中の渦がボールに対して不均衡な横力を発生させ、ボールが沈んだ。この1本は間違いなくC・ロナウド級です。
日本人として新たな歴史もつくった。大会が欧州CLに改編されてから、決勝トーナメントで得点した選手は初めて。セルティック中村俊輔も成し遂げられなかったゴールだ。加えて日本代表と同じ4-5-1布陣のトップ下でプレーし、先制点もアシスト。際立つ存在感でチームを92-93年以来の準々決勝へと導いた。前身の欧州チャンピオンズ杯を含め、日本人が8強以上に進出したのも、78-79年の奥寺康彦(ケルン)以来、31年ぶりだった。
本田
日本人初とかいうのは興味ない。自分が目指しているところは、はるか先なので。メディアはクローズアップしてくれるけど、オレは今更って感じ。
「W杯4強」の目標が疑問視される中、セビリアのブラジル代表FWルイス・ファビアーノらW杯戦士を屈服させた衝撃的な一撃。「悪魔の左足」は、岡田ジャパンにとって最高の起爆剤となりそうだ。
[2010年3月18日8時4分
紙面から]ソーシャルブックマーク

