[ 2014年2月11日8時43分

 紙面から ]男子500メートル1回目の加藤(撮影・井上学)<ソチ五輪:スピードスケート>◇10日◇男子500メートル

 日本期待の男子スプリント陣が、メダルを逃した。前回大会銅メダルの加藤条治(29=日本電産サンキョー)が2回合計1分9秒74で5位に入ったのが最高。前回大会銀の長島圭一郎(31=日本電産サンキョー)は1回目3位につけたが、2回目に失速して合計1分10秒04で6位に終わった。金メダルはM・ムルダー(27=オランダ)が1分9秒31で獲得。ヤン・スメーケンス(26)R・ムルダー(27)とオランダ勢が表彰台を独占した。

 長島と加藤、日本の誇る短距離の両エースが、ソチのリンクに散った。1回目で好位置につけながら、2回目は思った通りのタイムが出ず。日本勢今大会第1号のメダルも逃した。

 1回目、長島はメダル圏の3位につけた。100メートルはトップの9秒53。いい形で同走のM・ムルダーを追った。しかし、第2カーブの出口でわずかにバランスを崩してタイムロス。3位ながら34秒79と満足できるタイムではなかった。

 加藤も1回目、長島と0秒17差の5位につけた。100メートルを9秒66で回り、得意のコーナーワークも無難にこなした。バックストレートでやや疲れが出たようにも見えたが、最後まで踏ん張って同走の牟に引っ張られるようにゴール。逆転メダルの可能性を残した。

 しかし、ともにメダルは遠かった。目標としていた金メダルはおろか、銅メダルも逃した。98年長野大会の清水ら合計で9個のメダルを獲得している「日本のお家芸」。前回大会で同時に表彰台に上がった2人だったが、今回は逃した。

 同じ日本電産サンキョーに籍を置くだけに、ライバル意識は強烈だ。初めて相まみえたのは01年の高校選手権。山形中央高1年の加藤が、優勝候補だった北海道・池田高3年の長島を破って優勝した。4年後、日大を卒業した長島は、高卒の加藤に2年遅れて日本電産サンキョー入りした。

 競い合いながら結果を残してきた。4年前のバンクーバー五輪、1回目に6位と出遅れた長島は、高村コーチのマッサージを受けながら言った。「条治まで、何秒っすか」。2回目に逆転して銀メダル。銅メダルの加藤は「かなり悔しい」と唇をかんだ。W杯では加藤が14勝、長島が13勝。ライバル同士は、ともに「金メダルをとる」と明言してソチに乗り込んでいた。

 レース前、ともに金メダルを目指して好調ぶりを強調していた。長島はレース前日にスタートの動きを確認し、近い関係者に「スケート人生で最高の状態」と言っていた。加藤も3度目の五輪に気合たっぷり。日本出発前に「やることはやってきた。あとは自然体で臨みたい」と自信の言葉を口にしていた。

 挑戦は終わった。屈辱のメダルなしに、笑顔はなかった。調整の失敗なのか、氷の状態が合っていなかったのか。一番きれいな色のメダルは、W杯などで争ってきたライバルに持って行かれた。最も得意の種目で敗れた日本スケート陣、苦しい戦いはまだ続く。