アスリートには、大事な試合の前には“勝負メシ”というのがある。プロゴルファーなら、日曜日が最終日だから、土曜日の夜に食べるのがそれということになる。

 6月14日が最終日だったサントリー・レディースは、成田美寿々(22=オンワードHD)が、今季賞金ランク1位を快走するイ・ボミ(26=韓国)との激戦を制してツアー通算7勝目を挙げた。木曜日の夜には、あこがれの宮里藍と牛タンを食べて、優勝への活力を得て、土曜日の夜は「CoCo壱番屋」で“勝負メシ”のカレーライスを食べて優勝した。昨年のヨネックスレディースとサマンサタバサレディースでも土曜日の夜に食べて勝利し、今季はスタジオアリス女子オープンでも食べて、これまで計3勝していた。「もちろん食べたのに勝てなかった試合もあるのですよ。でももうゲン担ぎになっていて、上位で最終日を迎えることになったら、行かなくてはならなくなりました。ベタですが“ここイチ”のショットやパットで強くなりますからね」。ツヨカワ・美寿々がニコニコしながらこう言った。

 この試合で今季5回目の2位に終わったイ・ボミにも“勝負メシ”を取材していた。この大会は兵庫の六甲国際GCで開催されており、神戸三宮にマンションのあるイ・ボミは自宅通いだった。母ファジャさん(53)と暮らすイ・ボミは母の手料理を食べてコースに乗り込んでいた。豚肉の焼いたもの、牛肉のプルコギと食べ慣れた韓国料理が続いたが、土曜日の夜は、お母さんが疲れていたようなので、ハンバーグの「びっくりドンキー」に行ったそうだ。

 私は、アウトで4バーディーを奪い追い上げるイ・ボミを見て、スタート時点で成田に4打差つけられていたのをもし逆転したら「こりゃあ、びっくりドンキーならぬ、びっくりゴルフやな」とひとりアホなことを考えていた。結局、2打差で今回はカレーがハンバーグに勝ったが、アスリートが勝負の前に何を食べるのかは、これからも自分なりにしっかりチェックしたいと思っている。

 ちなみに、私事で恐縮だが、自分がゴルフをする日の朝は、雑煮をよく食べていく。マラソンランナーがそうするように“腹もち”がいいからだが、実はたまたま雑煮を食べてラウンドした日のスコアがよかったからで、私もゲン担ぎしているだけのことなのですが…。みなさんには、どんな“勝負メシ”があるでしょうか。【町野直人】