石川遼(20=パナソニック)がアーニー・エルス(42)から異例の指名を受けた。今日17日にオーストラリア・メルボルンで開幕する、世界選抜対米国選抜の対抗戦、プレジデンツ杯でエルスとペアを組むことが16日に決まった。海外メジャーで3勝を挙げ、世界ランク1位の経験もある実力者の熱いオファーで実現した。南アフリカから世界の頂点に駆け上がった技術と経験談をエルスから真剣勝負の中で教わり、真のワールドクラスを目指す。

 石川ペア結成の背景には、後継者を育成したいエルスの熱意があった。関係者によれば、エルスは「リョウとどうしてもペアを組みたい」と、世界選抜の主将ノーマンに直訴していた。世界ランク1位や海外メジャーを制した経験を、将来有望な石川に伝えたいという思いがくまれ、希望通りに2人のタッグが決まった。

 16日にはペアの公式発表を待たず、早朝から2人で練習ラウンドを行った。エルスは1ホールごとに事細かに戦略を伝授。前日までに練習ラウンドを行っており、試合前日のこの日は数ホールのみで終わらせるのが通例だが、初ラウンドの石川に付き添い16ホールまでプレーを続けた。

 石川の将来性は、以前から注目を集めてきた。前回の09年プレジデンツ杯では、石川はエルスと並ぶチーム最多の3ポイントを稼ぎ、昨年の全米オープンでは、2日目を終えて首位と2打差の2位でエルスと並び、3日目を最終組の1つ前の組で一緒に回った。

 石川は米国、欧州に比べると後進の日本で20歳でマスターズ優勝の目標を掲げてきた。同じく「第3勢力」の南アフリカから、ウッズらと肩を並べるまでになったエルスにとって、自分と重なる部分がある。世界のゴルフ界を引っ張る可能性を秘めた非凡な才能を育てたい-。石川のチャレンジ精神がエルスの琴線に触れたといえる。

 エルスはペアで使うボールも「リョウのでいこう」と提案。石川は「似顔絵のプリントを狙って打つようにするよ、とまで言ってくれるんです」と言って笑った。

 練習ラウンドには主将ノーマンも途中合流。エルスの指導ぶりを見届け、自分も石川にアドバイスした。また夕方の開幕式終了後には、引き揚げる石川の後方からウッズが速足で駆け寄り、2人は笑顔で握手を交わした。世界トップに挑む若者に、世界の超一流たちは広い度量で、紳士的な振る舞いを見せている。【塩畑大輔】

 ◆プレジデンツ杯

 米国と世界選抜(欧州以外)による対抗戦。米国と欧州の対抗戦「ライダー杯」にならい94年に始まる。基本的に2年ごとの開催で、通算成績は米国の6勝1敗1分け。3日目までは2人1組でのプレー。最終日は1対1のマッチプレー

 ◆前回プレジデンツ杯での石川

 世界ランク上位で出場する今回と違い推薦枠だったが、史上最年少の18歳で初出場。オギルビーと組んだ初日こそ、ウッズ、ストリッカー組に大敗したが、Y・E・ヤンとのコンビになった2日目、3日目前半で連勝。3日目午後は再びウッズ組に敗れたが、最終日のマッチプレーでペリーに勝ち、エルスと並ぶチーム最多の3勝を挙げた。