松山英樹(23=LEXUS)が本人も驚く大会との相性の良さを発揮した。8バーディー、2ボギーの65をマークし、暫定トップタイ発進。16年初戦となった前週は予選落ちだったが、14年4位、昨年2位と過去2年優勝争いを演じている舞台でパッティングがさえ渡った。

 1週間で50万人以上のギャラリーを集めるモンスタートーナメントで松山が輝いた。11番で7メートルのバーディーパットを沈めて流れをつかむと、野球場のようにスタンドが取り囲む名物ホール、16番パー3で8番アイアンを抜いた。「ショットが不調だから緊張して打った」と振り返ったティーショット。ピン上2メートルにつけ、バーディーで喝采を浴びた。「あれだけいいショットを打てると気持ちも上がってくる」とうなずいた。

 地元メディアからは「どうして、このコースでこんなに良いプレーができるのか」と質問攻めを受けた。本人は「何でですかね。分からないけど、いいスコアが出て自分でもびっくり」と不思議そうに笑うばかりだが、「65」はトップに肉薄した過去2大会を上回る最高のスタートとなった。

 好スコアには裏付けがある。3パットなしの合計27パットで「スコアに対するパットの貢献度」はツアー平均を大幅に上回る2・589を記録。昨季86位に低迷した項目だ。オフ前には「いつもパターが後回しになってしまう。それを逆に、パッティングを先に先にやってみたらどうかなとは思う」と話したことがあった。「ショットの方がうまくいかないと腹が立つ」「大けがをしたくないのでショットを(優先的に)練習しちゃう」というポリシーを曲げる覚悟すら示し、強化に取り組む考えだった。

 自慢のショットはまだ調整途上。前週は8位スタートから予選落ちしており「先週も初日は良かった。2日目が鍵になる」。緩むことなく、今年も大会の主役に名乗りを上げる。

 ◆松山のフェニックス・オープン 左手のケガから復帰2戦目だった14年は首位と3打差の3位で最終日を迎えた。13番のバーディーで首位に1打差と迫ったが、終盤にパットを決めきれず、優勝したケビン・スタドラー(米国)と2打差の4位。昨年は3打差の2位で最終日最終組スタート。1番でいきなりイーグルを奪ったが、最終18番で入れればプレーオフとなるバーディーパットを外し、ブルックス・ケプカ(米国)に1打及ばず2位だった。

 ◆スコアに対するパットの貢献度=ストロークス・ゲインド・パッティング(SGP) ショット精度にも左右される単純な平均パット数よりも、パットの実力を示せるように工夫された指標。例えばA選手がグリーン上、ピンまで3メートルにつけたとする。長年蓄積したデータにより、3メートルからカップインに要した平均パット数は算出されており、この3メートルからの平均が仮に「2」パットで、実際にはA選手が「1」パットでカップインさせると、1打稼いだ計算になる。各ホール集計していくと、米ツアーの平均的なパット力の選手と比べて、ラウンド全体を通じパットで何打稼いだかが示せる。昨季の松山は0・077だった。