ツアー本格参戦1年目のささきしょうこ(20=フリー)が6バーディー、3ボギーの69で回り、通算9アンダー、207で初優勝を飾った。幼い頃からプロで活躍することだけを目指し、異色の経歴を歩んできた。プロテスト合格からちょうど1年という節目の日に、平仮名登録の選手としても初優勝となった。

 短いウイニングパットを沈める前から、ささきは泣いていた。「優勝なんて奇跡だと思います」。スイング改造途上で「当たる気がしない。100を打つかも」とこぼしていたショットが絶好調。前半で3つ伸ばしてトップに立ち、岡山との同期対決を制した。

 幼い頃はぜんそくを患い、父修治さん(56)によれば「年間30~40日しか学校に行けなかった」。9歳でゴルフを始めたいと言った時、父に言われた。「自分が課す基礎トレーニングを半年間休まず続けたら、やってもいい」。体が弱いささきにとっては無理難題だったが、やり遂げて大反対していた父を翻意させた。

 プロだけを見据え、一家で覚悟を決めた。家を売って資金調達した父は警備会社の仕事をやめた。「笙子がただで練習させてもらう代わりに」と、住み込んだゴルフ場で夫婦そろって働いた。ささきも中学から「ゴルフは仕事」と捉え、ジュニア大会よりも男子プロの地区オープンや女子プロの試合を優先して転戦。“職場”を確保するため、大会主催者には、ささき自ら電話してマンデートーナメントの推薦をお願いした。

 「大きくなって(父の決断の)重みが分かって、逃げ出したいと思う時もあった」と明かす。昨年10月の下部ツアー。首位で迎えた最終日に7番で「11」をたたいた。そばで見ていた父は、それ以来、重圧を減らすため娘のラウンドについて回ることをやめた。

 「平仮名にしたかいがありました。変えるつもりはありません」。読みやすさと姓名判断から決めた登録名で飾った、忘れられない初V。優勝賞金は全額、両親に渡す。【亀山泰宏】

 ◆ささきしょうこ(佐々木笙子)1996年(平8)6月8日、兵庫・加古川市生まれ。クラーク記念国際高卒。8歳で青木功のゴルフ世界殿堂入り特番をビデオで見てゴルフを始める。兵庫・猪名川中時代は平均飛距離280ヤードを誇る飛ばし屋で鳴らし、3年時の11年日本ジュニアで初出場初優勝。コーチは岡本綾子の師匠だった男子プロの岡本昭重。170センチ、65キロ。

 ◆登録名 現在、日本女子プロ協会(LPGA)の平仮名登録は、ささきの他に「たにひろえ(谷弘恵)」「かねだひろみ(金田裕美)」がいる。本名と異なる登録名は、女子はLPGA、男子は日本プロゴルフ協会(PGA)に申請して認められれば使用可能。男子では石垣聡志が「すし石垣」で登録。過去には横峯さくらが「さくら」で申請したが、却下されたこともある。