<男子ゴルフ:とおとうみ浜松オープン>◇初日◇19日◇グランディ浜名湖GC(7028ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝2000万円)

 ニッカーボッカーとハンチング帽がトレードマークの個性派、すし石垣(37=ゴルフパートナー)が1イーグル、6バーディー、1ボギーの7アンダー65で首位と1打差の5位につけた。2度にわたる右ひじ手術の影響で昨年はシード落ちしたが、大好きな浜名湖ボートレースのエンジン音をBGMにスコアを伸ばし、ツアー初優勝を狙う。

 追い風より、心地よいエンジン音が打球を後押しした。18番パー5。ピンまで246ヤード地点のすし石垣は、風の中に愛してやまない重低音を聞いた。「西風なんで、聞こえてくるはずと期待してました」。浜名湖の対岸にあるボートレース場から、リズム良く響く排気音に、テンションが一気に高まった。4番アイアンの一撃は、ピンまで7メートルの位置に2オン。初日を締めるイーグルを、右手を振り回す「回転すしダンス」で祝った。

 ゴルフと同じくらいボートレースを愛する。選手用の駐車場から、コースまでの送迎がボートだった時点で、気持ちは高ぶっていた。「今日はボートレース選手も応援に来てくれているので、スタートぶちこみました」。観戦した有力ボートレーサーの菊地孝平(32=静岡)は「自分もスタートを武器にSG(最高クラス)で優勝しましたけど、今日のすしさんのスタートは自分以上」と笑った。

 陽気な男だが、1年前はどん底だった。07年日本プロ3位。シードに定着し、初優勝も期待された。だが09年に右ひじの痛みが悪化。素振りすらできなくなった。原因の遊離軟骨除去には、2度の手術を要した。

 「手術後に目覚めた瞬間、チ…いや、局部から管が伸びていて、ショックを受けました」。麻酔で身動きが取れないまま、ベッドの上に20時間。その間の排尿のため、尿道にペン程度の太さのパイプが通されていた。「管につながれたまま天井を見上げて、普通の生活ができること、ゴルフができることのありがたさを、しみじみ感じました」。

 院内で自分より重篤な患者を目にしたことも、考え方を変えるきっかけになった。右ひじは最初5センチも動かなかったが、長いリハビリも苦とは思えなかった。「自分には、痛みなくゴルフができる未来がある。そう考えれば、つらいことなんてない」と言い切った。

 昨年はシード権をなくし、チャレンジ競技に回ったが、賞金ランク2位で今季ツアー前半戦の出場権を獲得。ニッカーボッカーとハンチングの姿が、ひのき舞台に戻ってきた。「必ずツアーで優勝できる、そして賞金王決定戦に出られると信じていた。あ、それはボートレース。ゴルフは日本シリーズでしたね」と「すしネタ」で笑いも誘う。東日本大震災以降、復興祈願で舟券断ち中。その分グリーンで、ラインの読みを的中させまくるつもりだ。【塩畑大輔】