<米男子ゴルフ:マスターズ・トーナメント>◇最終日◇13日◇米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7435ヤード、パー72)

 バッバ・ワトソン(35=米国)が5バーディー、2ボギーの69で回り、通算8アンダー280で2年ぶり2度目の優勝を果たした。大会史上最年少優勝を目指す同組のジョーダン・スピース(20=米国)に一時は2打のリードを許したが、飛距離を生かして猛反撃。中盤で一気に逆転して完勝、賞金162万ドル(約1億6200万円)を獲得した。スピースは3打差の2位。大会史上最年長優勝を狙ったミゲルアンヘル・ヒメネス(50=スペイン)は4位だった。

 勝負どころで最強の武器で圧倒した。左ドッグレッグの13番パー5の第1打。身長191センチのB・ワトソンは代名詞のピンク色のドライバーを、これでもかと全力で振り抜いた。ボールがひしゃげそうな一撃は、左の林の上空に向かって大きくスライスし、見守った観衆のほとんどはミスショットと確信した。

 次の瞬間、「Oh

 my

 God!」(なんてことだ)と驚きの声が上がった。松の枝を揺らす音とともに、観衆の予想よりはるか前方のフェアウエーに、ボールが着弾したのだ。ホールを大幅にショートカットした1打の飛距離は366ヤード。規格外のパワーを生かした、常識にとらわれない攻めに本人は「あんなに曲げるつもりじゃなかった。フェアウエーに落ちてホッとした」と笑った。

 残りはもう、サンドウエッジの距離しかない。安全なピン左5メートルに乗せ、リードを3打に広げるダメ押しのバーディーを奪った。第2打地点で100ヤード近く置き去りにされたスピースも「あのショット、決して忘れないと思う。70ヤードも左に飛んだからOBかと思ったら、完璧なところに落ちた」とため息。いつもは練習をともにするかわいい後輩に、勝負どころで容赦なく力を見せつけた。

 序盤はスーパーショット連発のスピースに、7番までに2打のリードを奪われた。しかし、570ヤードの8番パー5で、第1打を3番ウッドで放つ安全策を選んだ後輩を横目に、豪快なドライバーショットで350メートル近く飛ばないと越えられないバンカーの先まで運んだ。攻めの姿勢で流れを変えると、ここから2連続バーディーで、2連続ボギーの相手を逆転した。

 12年の大会初制覇後、ツアーで勝てなくなった。「注目されることに慣れるのに時間がかかった」。今年2月のノーザントラスト・オープンでようやく優勝。そして今回、再びグリーンジャケットに袖を通し「この勝利は家族のためのもの」と締めくくった。2年前の優勝直前に養子に迎えた長男カレブ君を抱き上げる姿に、オーガスタの大観衆が惜しみなく拍手を送った。