ラグビー日本代表の選手を中心とした選手会が来年度初めにも発足することが、14日までに決定的となった。東芝SO広瀬俊朗(34)、サントリーSO小野晃征(28)らが発起人で、日本ラグビー界初の試みとなる。プロ野球などの選手会とは違って労働組合ではなく、選手をまとめて協会とも協力する姿勢だ。

 立ち上げへ思いが強まったのは昨年のW杯イングランド大会に向けた代表活動だった。ラグビーは代表活動の期間が長いため、選手と協会が契約を結ぶが、その交わし方は「あり得ない状態だった」とある選手は語る。自宅に契約書が1枚送られ、サインをして返送するものだった。4月からの宮崎での長期合宿は選手日当は3000円で、そこから食事代として1000円が徴収された。王国ニュージーランド代表選手の日当は約10万円。「お金のためにやっているわけじゃないけど、あまりに敬意がない」と嘆く声もあった。大会直前の8月まで、サインに至らない選手もいた。

 広瀬は「グラウンド外で不安があってはいけない。特に19年は日本にW杯がくる。これからのジャパン選手に同じ思いはしてほしくない」と説明した。日本代表やトップリーグ(TL)などどこまでを選手会の範囲とするか未定だが、小野は「最終的に高校生なども意見を言える、よりどころになる組織にしたい」と話す。昨年11月のTL開幕戦を終えた翌日、小野はイングランドに飛び、国際ラグビー選手会(IRPA)の会議に参加。強豪国選手会を代表して出席した選手の話に耳を傾けた。

 日本協会の坂本典幸専務理事も、選手会については「いいことだと思う」と歓迎する。設立の方向で広瀬とも月に1回は協議し、選手会の規模やどんな役割を担うかという細かい部分を詰めている段階だ。広瀬は「例えばトップリーグのチケット問題も協会任せで批判ばかりするのはよくない」と話す。グラウンド外で、選手が前に進もうとしている。

 ◆強豪国の選手会 ニュージーランド(NZ)、南アフリカ、オーストラリアの南半球強豪3カ国に加え、イングランドをはじめとする欧州の強豪6カ国にはすでに選手会がある。たとえばNZでは選手の肖像権で得たお金の33%は選手会に入る決まりがあるなど、運営の体制も整っている。年に1回は選手会と協会の話し合いも行われている。

 ◆他競技の選手会との違い 今回立ち上がる選手会はプロ野球などの選手会とは違い、労働組合ではない。日本ラグビーは企業スポーツであるため、プロ選手と社員選手が混在している。社員選手はすでに所属企業の労働組合に属しており、重複して組合員になることはできないことも理由の1つ。将来的に学生選手も入れる考えもある。