アメリカンフットボール関東学生1部の日大をのぞく15チームが21日、「関東学生アメリカンフットボール共同宣言2018」と題したメッセージを各チームのサイトやSNSに掲載して発信した。日大のラフプレー問題が拡大し、社会問題にまで発展している。「野蛮なスポーツ」とまで言われ出している危機的状況に、安全対策を最優先に、スポーツマンシップ、フェアプレー精神を持ち、真摯(しんし)な姿勢で取り組んでいくことを宣言している。

 17日に1部校指導者による監督会議を開き、今回の共同宣言を出すことで合意した。また、原因究明と対策のために、関東学生連盟には第三者による調査委員会を立ち上げるよう要望もしている。連盟は規律委員会を設置して日大、関学大などの聞き取り調査をし、月内に調査をまとめ、理事会で最終処分を決める方針となっている。

 共同宣言の内容は次の通り。

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 私たちは、アメリカンフットボールというスポーツを、心から愛しています。しかし今、そのフットボールが、かつてないほどの危機を迎えています。テレビでは毎日のように衝撃的な映像が繰り返し流され、フットボールを「危険なスポーツ」どころか「野蛮なスポーツ」と感じられている方が増えてきています。このような現状で、80年以上の歴史を持つ日本のフットボールが将来も存続し得るのか、私たちは極めて強い危機感を持っています。

 大きな身体の選手たちが、ものすごいスピードで身体をぶつけ合うことは、フットボールの魅力のひとつですが、ときには大きなけがに見舞われる選手もいます。しかし、けがをする可能性があるからこそ、試合を行う上では、対戦相手へのリスペクトや最高のスポーツマンシップ、フェアプレー精神を持つことが大前提となります。こうした精神は、人間として生来備わっているものに加え、日々の練習によってより高次のものを身に付けていく必要があり、フットボールに関わるすべての者がより高いレベルの精神を備えることができるよう、謙虚に取り組んでいく所存です。そして、けがをする可能性があるからこそ、私たちは、脳震盪や熱中症などによる重篤な事故が起こらないよう、安全なタックルの仕方や最新知識の習得など、安全対策を何よりも優先するよう心掛けています。

 フットボールは、学生スポーツの目的のひとつである「学生の成長」に適したスポーツです。学生たちがフットボールから学ぶことは多く、さまざまな点で、非常に高い水準にあることが求められます。規律や自制心、心身ともに自らの限界を超えていくこと、研究熱心であること、仲間と支え合って高みを目指すこと。自らの役割を全うするだけでなく、チームや仲間を優先する自己犠牲の精神も学びます。対戦相手との健全なライバル心や、チームの枠を超えた友情も育まれ、人格そのものが磨かれていきます。

私たち自身、決して机の上だけでは学べないようなことを、フットボールから学んできました。多種多様な局面に遭遇するフットボールは、まさに人生の縮図であり、間違いなく人生を豊かにしてくれるものだと言えます。

 公式規則にある「フットボール綱領(The Football Code)」の前文には、以下の通り記されています。「伝統的に、フットボールは教育活動の重要な一環を担っている。フットボールは激しく、力に満ちた、身体をぶつけ合うスポーツである。それゆえ、プレーヤー、コーチ、その他の試合関係者に対しては、最高のスポーツマンシップと行動が要求される。不正な戦術、スポーツマンらしからぬ行為、故意に相手を傷つけることは絶対に許されない」

 フットボールに関わるすべての者は今一度、ここで述べられていることを胸に深く刻み込み、フットボールに向き合うべきだと考えています。

 私たちは、フットボールという素晴らしいスポーツ、そして私たちが心から愛するスポーツに対して、今後も真摯な姿勢で取り組んでいくことを、志を同じくする関東学生アメリカンフットボールの仲間とともに、あらためてここに宣言します。

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 大学スポーツは岐路に立たされている。スポーツ庁が全米体育協会(NCAA)を参考にして来春創設する統括組織「日本版NCAA(仮称)」には大学スポーツの体質改善が期待されており、同庁の鈴木大地長官も「今回の事案は大学スポーツ全体の課題として考えるべきだ」と話している。今回の悪質な反則行為は社会問題にまで発展したことを深刻に受け、まずは関東大学リーグの監督会が動いた。