「やるべきことはやったが、すごく悲しい」。2016年夏季五輪招致で2日、東京の落選が決まった瞬間、国際オリンピック委員会(IOC)総会が開かれたコペンハーゲンの会場では日本のアスリートらが、がっくりとうなだれた。市内のホテルで記者会見した石原慎太郎東京都知事は「無念、残念です」と悔しさをにじませた。

 知事は「自分の人生の中で非常にいい経験をした。これを国民に伝えることが責任だと思う」と述べた。その上で「(責任を取って)知事を辞めることは絶対にない」と断言した。

 緊張の投票。メディアセンターのテレビ前に招致委理事の小谷実可子さんや室伏広治のほか高橋尚子さんら約20人が陣取り、画面をじっと見詰めた。1回目でシカゴが落選すると、水泳の鈴木大地さんらが「やった」と控えめに歓声。しかし2回目で東京は最下位に。小谷さんは目から涙をあふれさせ、取り囲んだ報道陣に「ありがとうございました」と頭を下げた。

 高橋さんは「みんなで力を合わせてやるべきことはやりました。でもすごく悲しい」。石原知事らは会場の別室に入ったままだった。

 招致団はこの日、若々しいアスリートを前面に出し「環境五輪」を必死にアピールした。

 約45分間のプレゼンテーションではパーカ姿の体操選手三科怜咲さん(15)が「国家の代表ではないわたしですが、皆さんの国々の将来のオリンピアンを代表してここにいます」と流ちょうな英語で堂々と切り込んだ。鳩山由紀夫首相に続いて石原知事は「次世代の若者に希望や勇気、未来に立ち向かう力を贈りたい」とスピーチを締めくくった。

 コペンハーゲン市庁舎前のパブリックビューイング会場では、大学生の渡辺悠さんが「(パラリンピック競泳で活躍した全盲の)河合純一さんが『僕は目が見えないけど2016年の東京五輪が見える』と話したのには涙が出た。落選はうそだと思いたい」と目を真っ赤にしていた。