ミラノ石川祐希(28)はその瞬間、静かに右拳を握った。

セットカウント2-1で迎えた第4セット(S)。マッチポイントから、日本代表の絶対エースが放った強烈なスパイクが、相手コート奥で弾んだ。レギュラーシーズン6位チームが同1位のトレンティノを退け、クラブ、自身ともに初めてつかんだ3位の座。両チーム最多28得点でMVPを獲得し、快挙に花を添えた。

かねて石川は、ミラノについて「どこのチームでも勝てるポテンシャルを持っている」と話していた。「自分たちのことだけに集中していけば、おのずと結果はついてくる」。この日も、決定率70%をマークしたアタックだけでなく、ブロックやサービスエースも決めてチームを鼓舞。大一番で、その言葉をしっかりと体現してみせた。

「非常に大事な1年になる」と引き締めて迎えたパリ五輪イヤー。クラブ初優勝こそ逃したが、昨季の4強入りに続き、今季も「初」達成に導いた。次の舞台はパリ。この後は日本に帰国し、日本代表として5月開幕のネーションズリーグ第2週(6月4~9日、福岡・北九州市)からの参戦を視野に調整を進めていく見込み。日の丸を背負い、ミュンヘン大会以来52年ぶりのメダル獲得へ向かっていく。