<陸上:日本選手権(兼アジア大会代表選考会)>◇最終日◇6日◇香川・丸亀競技場◇男子やり投げほか

 男子やり投げで、09年ベルリン世界選手権銅メダルの村上幸史(30=スズキ浜松AC)が11連覇を達成した。最後の6投目に80メートル60をマークした。日本選手権では自身初の80メートル超え。11連覇は男子ハンマー投げの室伏重信らを抜き、室伏広治(16連覇)に続く単独2位の最長記録となった。

 雄たけびとともに、やりが高々と放物線を描いた。最終6投目。大会では自身初の大台突破となる80メートル60が掲示されると、村上は跳び上がって喜んだ。単独2位の11連覇。それよりも、世界と戦える感触を取り戻したことがうれしかった。

 村上

 最後に大きなものを得られた。83から85メートルは行ったんじゃないかと思ったくらい。投げて一瞬視界から消えたやりが、すごく高いところに見えた。今までにない感覚だった。

 09年の世界選手権では83メートル10の自己ベストをマークなど銅メダルを獲得したが、5月の大阪GPで恐怖心が芽生えたという。世界のトップ選手を意識しすぎて77メートル66の5位。「本当に情けない試合をした。空回りと焦りがあった」。

 振り払ったのは反復練習だった。5月末、家族とともに愛媛に帰郷。村上は1人だけホテル暮らしをしながら、練習に集中した。「本当に基本ばかりやった」。立った状態からの“1歩投げ”を何度も繰り返した。

 人口1800人の生名(いきな)島生まれ。この日の会場は隣県だけに「島からたくさん応援に来てくれたんです」と声援も力に変えた。「85メートルの先に世界との真剣勝負がある。これで次につながる」。銅メダリストの自信を完全に取り戻した。【大池和幸】