柔道女子63キロ級で五輪連覇の谷本歩実(29=コマツ)が引退濃厚なことが25日、分かった。この日、都内でのイベントに出演後、今後の去就について「気持ちはだいたい固まっている。コーチの方をやろうと思っている」と指導者転身の意向を示した。北京五輪後は1度は12年ロンドン五輪を目指す姿勢を見せていたが、故障もあり離脱していた。全日本柔道連盟の首脳陣から慰留される可能性もあり、最終的には9月の世界選手権後に結論を出すつもりだ。
谷本の澄み切った表情が、引退の決意を固めつつあることを物語っていた。前十字じん帯を断裂した右ひざの手術を昨年4月に受け、戦線離脱。12年ロンドン五輪出場へ、11月の講道館杯出場を全日本柔道連盟が義務づけているが「気持ちはだいたい固まっている。コーチの方をやろうと思っている」と柔道人生にピリオドを打とうとしていることを明かした。
肉体的な限界ではない。「練習をするとまだまだできる。柔道も好きなんです」。だが三たび、五輪での頂点を目指すとなると話は別だ。「自分の中で五輪は(金メダル)2つ取れて、もういいかなという思いがある。今、女子の選手が一生懸命やっている中で、私のような中途半端な気持ちでは申し訳ない」。柔道を愛するがゆえに、全身全霊を尽くせないまま競技を続けることは許せない。
1本至上主義の日本柔道をまさに体現した柔道家だった。一本背負いなどの投げ技が得意で「女三四郎」の異名を取った。04年アテネ五輪、08年北京五輪と史上初めて2大会連続オール1本勝ち。斉藤仁、野村忠宏、谷亮子らでも成し遂げられなかった偉業だった。
戦線離脱中にコーチ業の魅力を感じた。所属先では兼任コーチとして後輩に助言を送り「言ったことを3日間で吸収する。そういう姿を見るのは本当に楽しい」と言う。この日はアジアから来た子どもたちに柔道教室で指導。9月には上海、10月にはイタリアで教室を開催する予定で、世界に柔道の魅力を伝える活動にも力を入れつつある。
去就の最終結論は9月の世界選手権後に吉村和郎強化委員長らと話し合って決める。63キロ級は上野順恵が昨年世界女王となり後継者も育ちつつある。「(結論は)最後まで分からない。でも時代は流れているんです。私も新しいことに対応しないといけない」。谷本が第2の人生へ歩み出そうとしている。


