<レスリング:世界選手権>◇8日◇モスクワ

 女子51キロ級で過去6度世界女王に輝いた坂本日登美(29=自衛隊)が、48キロ級で金メダルを獲得した。同階級では07年の伊調千春以来の優勝。これまで五輪で実施しない51キロ級で、五輪出場も果たせぬまま引退したが、昨年末に48キロ級での現役復帰を決めて快進撃。12年ロンドン五輪初出場へ大きなタイトルをつかんだ。女子51キロ級の堀内優(19)も決勝に進出。男子グレコローマン74キロ級の金久保武大(24)は5位だった。

 世界舞台に帰ってきた坂本はやはり強かった。51キロ級で国際大会60連勝を続けたまま08年に引退したが、1年のブランクがあっても、階級を落としても強さは変わらない。1、2回戦をフォール勝ち。準々決勝では08年北京五輪金メダリストのハイン(カナダ)に2-0で完勝。決勝では地元ロシアで欧州王者のオーザクを撃破した。

 妹と2人でつかんだ金メダルだった。かつては48キロ級に妹の真喜子さんがおり、姉妹対決を避けるために自分は非五輪階級の51キロ級で戦ってきた。北京五輪をかけた戦いでは55キロ級で女王の吉田沙保里に敗れ、引退を決断。代表コーチとして真喜子さんに夢を託すことを決めた。

 それでも五輪への思いはくすぶり続けた。昨年の世界選手権前に国際レスリング連盟が51キロ級を五輪階級採用へ動いていることを知ると「12年ロンドン五輪に入れば(現役を)やります」。裏を返せば、妹と五輪出場をかけて戦う意思は絶対にないということだった。結局、階級増加案は却下され、夢の扉は閉ざされたかに思えた。

 だが世界選手権で敗れた妹が自ら切り出してきた。「日登美が五輪を目指した方がいい」。坂本も心に火がついた。「自分も挑みたいと思った」。真喜子さんの引退を機に、昨年12月に現役復帰を決めた。今大会は「(2年後の)五輪を目指す幸せを感じている。ロンドン五輪に弾みをつけるために絶対に優勝する」と宣言し、臨んだ。

 優勝後はマットをたたいて喜びをかみしめた。その両手には夢見ていた12年ロンドン五輪への手応えが残っているに違いない。