<フィギュアスケート:グランプリシリーズ第3戦・中国杯>◇4日◇中国・上海

 男子SPで、GPシリーズ初優勝を狙う16歳の羽生結弦(東北高)が自己ベストを更新する81・37点で2位につけた。冒頭で4回転トーループに成功。東日本大震災で被災し、練習環境が整わない中で臨んだ今季初戦で、最高の滑り出しを見せた。

 汗が飛び散るほどに力強く、両手を大きく開いた。全身全霊を込めた羽生の最後の決めポーズ。割れんばかりの拍手に包まれた。汗をぬぐい、満面の笑みで手を振った。自己ベストを5点近く更新する81・37点。「80点を出せたのは良かったし、すごいうれしい。国際大会で4回転を決められたのは良かった」と喜んだ。

 最初に挑んだ4回転ジャンプ。昨季2度、フリーでしか成功していない大技を、SPで鮮やかに舞い降りた。連続させるはずだった3回転ジャンプは「跳んだ瞬間に駄目だと思った」と続かなかったが、機転を利かせて単発予定だった3回転ルッツの後半に組み込んでリカバリー。2つのスピンで最高難度のレベル4も獲得した。技術点に限れば8人中トップ。それでも「本当は4回転-3回転を決めたかったので少し残念」と悔しがるほどだった。

 被災地への思いを乗せた演技だった。仙台市出身。東日本大震災では練習中に被災した。拠点リンクは使えず、全国各地を転々。10連泊は当たり前のホテル暮らしを何度も経験した。足りない練習時間は約60回のショーで補った。諦めかけたことはあった。だが、諦めなかった。「被災された方々が、被災しても前を向いて行けるんだというエールになれたら」。

 ジュニア時代から競い合ってきた首位ガチンスキーとはわずか0・27点差。GP初の表彰台はおろか、優勝も見えてきた。「フリーも4回転は入ってくる。ほかのジャンプやステップも丁寧にやりたい。ガチンスキー選手には勝ちたい」。闘志を、静かに燃やした。

 ◆羽生結弦(はにゅう・ゆづる)1994年(平6)12月7日、仙台市生まれ。10年世界ジュニア選手権に優勝し、同年からシニア転向。同年全日本選手権では自己最高の4位に食い込んだ。11年4大陸選手権銀メダル。3月の東日本大震災で練習リンクが被災した。170センチ