東京五輪から早3年。

いよいよ今年はパリ五輪だ。

トライアスロン大会も各地で開催され、5月11日土曜日には神奈川県横浜市でワールドトライアスロンシリーズ(WTCS)横浜大会が開かれる。

3月のWTCSアブダビ大会中止により、2024年シリーズ初戦として開催される横浜大会は、パリ五輪の日本代表選考大会に指定されており、日本人選手にとっては重要なレースとして位置付けられる。

今回は、現段階でのスタートリストからみるレースの展望について記載したいと思う。

まずは女子から。

日本からは高橋侑子(相互物産/東京)、中山彩理香(アクサスホールディングス/東京)、佐藤優香(トーシンパートナーズ、NTT東日本・NTT西日本、チームケンズ/山梨)、岸本新菜(リソル・稲毛インター/千葉)、酒井美有(トーシンパートナーズ・チームケンズ長野/山梨)の5名が参戦予定だ。

リオ五輪切符をつかんだ瞬間の筆者
リオ五輪切符をつかんだ瞬間の筆者

先月の広島県廿日市市で開催されたアジア選手権では終始、主導権を握り優勝した高橋は好調なパフォーマンスで横浜に挑む。経験豊富な佐藤、岸本、そして伸び盛りの酒井、中山がどう世界の強豪にくらいついていけるかも見どころとなる。

海外勢では、現在世界ランキング上位の選手が若干名不在の中ではあるが、東京五輪金メダリストのフローラ・ダフィー(バミューダ諸島)が久しぶりに参戦する。また、ミドル・ロングの距離(ノンドラフティング)で圧倒的な強さをみせ、既にパリ五輪に内定しているテイラー・ニブ(アメリカ)もスタートリストに名前がある。近年、女子はスイムから良い位置でレースができなければ完走も厳しいほどに世界のレベルがあがっている。その中で今回はこの2人がキーパーソンとなるのではないかと思う。

個人的に注目すべきはアリス・ベッド(イタリア)とリオ五輪金メダリストのグウェン・ジョーゲンセン(アメリカ)、リオ五輪銅メダリストのビッキー・ホーランド(イギリス)だ。この3人は1~2年前に出産したばかり。カムバックしてからは「産後か?」と疑うばかりのパフォーマンスを発揮して、ワールドカップで大活躍をしている。

トライアスロン界最強ママアスリートにも注目だ。

続いては、男子。

日本からは、ニナー賢治(NTT東日本・NTT西日本/栃木)、北條巧(NTT東日本・NTT西日本/東京)、佐藤錬(玉昌会/鹿児島)、小田倉真(三井住友海上/東京)、安松青葉(アクサスホールディングス/東京)、古谷純平(三井住友海上/東京)が参戦予定だ。

女子同様、先月のアジア選手権では危なげなく優勝したニナー・賢治の好調が伺える。他にもスイムからパフォーマンスの高い北條、小田倉、経験豊富な古谷、伸び盛りの佐藤、安松がそれぞれベストパフォーマンスを発揮することに期待したい。

リオ五輪の選手村でポーズ
リオ五輪の選手村でポーズ

海外勢では、アレックス・イー(イギリス)とヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)の2強が不在となる。近年、男子はバイクで大集団からのランスタートが多いのだが、横浜ではどうなるか。注目すべきは、東京五輪金メダリスト、クリスチャン・ブルメンフェルト(ノルウェー)だ。女子のダフィーと同様、久しぶりのワールドトライアスロンシリーズに参戦。普段はニナーと練習もしているブルメンフェルトであるがバイクのパフォーマンスが非常に高いので、彼のスイムアップの位置はひとつポイントになるかもしれない。

スイムから良い位置につけ、パリ五輪の選考も熾烈なフランス勢とブルメンフェルはじめとするバイクの走力のある選手たちとでのバイクでの駆け引きにも注目だ。

続いては、パラトライアスロン。

日本人出場選手は下記の通り。

女子PTS2:秦由加子(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)

女子PTS4:谷真海(東京都トライアスロン連合)

男子PTWC:木村潤平(Challenge Active Foundation・サンフラワー・A株式会社/東京)

男子PTS4:宇田秀生(NTT東日本・NTT西日本/滋賀)

男子PTVI:米岡聡(三井住友海上/東京)・寺澤光介ガイド

パリ五輪に向けて、ヨーロッパ勢の勢いが増す中で、自国開催での応援を力に日本勢の活躍に期待したい。

自分自身のことを振り返ると、オリンピックに出場してから早8年も経とうとしている。

ライフステージが目まぐるしく変化し、今や遠い昔の想い出になりつつあるが、そんな今、感じることは、「目標や夢に向かって、全力を注げることは幸せなこと」ということだ。正直なところ、競泳、陸上、トライアスロンをやってきた中で良い成績が出せたり目標が達成できたレースは数えるほどしかない。うまくいかず悔しい、次回はこうしたいと思うレースばかりだ。競技者だった頃は反省ばかりの日々に嫌気がさしたり、うまくいかずもどかしい時も多くあったが、振り返ると、そのひとつひとつが今となっては自分を成長させてくれた「良い思い出」になっている。

選手には「今」という貴重でかけがえのない瞬間を大切にしてほしい。いつかきっと、すべてが良い経験となり、人生の糧となるだろ。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン日本代表)