泥酔していた教え子の大学女子柔道部員に乱暴したとして、準強姦(ごうかん)罪に問われた04年アテネ、08年北京両五輪の金メダリスト内柴正人被告(34)に対し、東京地裁(鬼沢友直裁判長)は1日、求刑通り懲役5年の実刑判決を言い渡した。公判中、内柴被告は一貫して性行為は「合意の上」と主張していたが、結果は完全敗訴となった。判決後、内柴被告は弁護団を通して「僕は無実です」とコメントを発表。即日、控訴した。

 「被告人を懲役5年に処する」。鬼沢裁判長から実刑判決を宣告された瞬間、内柴被告は顔を両手で覆い、がっくりとうなだれた。証言台前でぼうぜんと立ち尽くし、結果は完全な“一本負け”。唇をかみしめ、握っていた拳を小さく震わせ、動揺を隠さなかった。

 昨年9月の初公判から約5カ月。内柴被告は一貫して性行為は「合意の上」として無罪を主張してきた。この日は、白いシャツに黒のカーディガン姿で出廷。判決理由の朗読の間は、天を仰ぐなど納得がいかない様子をみせた。椅子に座った内柴被告の背中は次第に丸くなり、5分ほど拝むようなポーズで両手を顔に当て、目をつぶった。

 鬼沢裁判長は「輝かしい実績を持ち、柔道界を指導していくことが期待される立場でありながら、被害者の心を深く傷つけ続けた責任は極めて重い」と判決理由を説明した。内柴被告は、カラオケ店(東京・八王子市)で被害者から口淫行為をしてきたと主張したが、同裁判長は「酔いつぶれて意識を失っていたことを利用した明らかなうそ」と全面的に否定した。その他、女子部員の供述を「十分信用できる」とする一方、これまでの内柴被告の弁解を「全く信用できない」「虚言」(同裁判長)などと厳しく非難すると、被告は腕を組みながら約30分うつむいていた。閉廷前、裁判長が控訴手続きについて説明する際には、声を遮り「(控訴)させてもらいます」と言って、足早に法廷を後にした。

 判決後、内柴被告は弁護団を通して「僕は無実です」とコメントを発表。弁護団も「女性の証言を安易に信頼した、事実認定の方法を誤った不当な判決」とし、即日控訴した。

 一方、被害者側の代理人弁護士は「正しい判決でも苦しみが完全に癒えることはない。私は一生苦しみ続けなければなりません」とする被害者のコメントを読み上げた。辻孝司弁護士は「十分納得の出来る100点満点の判決」と評価した。体罰問題でも揺れる柔道界。内柴被告の実刑判決で、さらに厳しい視線が向けられそうだ。